黄昏のエロゲ感想/a>

黄昏のエロゲ感想

エロゲ感想ブログ たまにオススメ書いたりする。

2019年にプレイしたエロゲ BEST10

内容説明

今回は自分が2019年にプレイしたエロゲ(ギャルゲーも含む)の中から10作品をランキング形式で紹介していきたいと思います。

基本的にネタバレ無しなので未プレイの方にも問題無い記事となっています。


ランキング発表


[10位:AQUAS]

ジャンル:闇鍋
公式サイト:閉鎖

作品紹介
SF ファンタジー バトル 泣き 鬱等の様々なジャンルをごちゃ混ぜにした作風と、人類が滅び 人魚が地球を支配している時代といった独特の世界観が魅力的な作品です。
終盤の展開はやや難解気味 というか説明不足感が否めませんが ルート毎に展開が全く違い退屈しらずのストーリーと考察の面白さから10位にランクイン
マイナーより且つ評判もイマイチ パッとしないため手に取る方は少ないかもしれませんが、かなりオススメできる一本です。
設定を作り込んで、バラバラの各ルートを纏める事ができていたなら、上位に食い込んだかも…







[9位:ラムネ2]

ジャンル:夏、田舎、雰囲気ゲー
公式サイト:閉鎖?

作品紹介
ねこねこソフト ラムネシリーズの3作目
演出にファンサービスが多く 完全に前作をプレイしている事前提で作られているので単体での評価はしづらいですが、
個人的にかなり気に入った作品
キャラ良し 舞台設定良し 盛り上がり良しと雰囲気ゲーで抑えるべき点はしっかり押さえている良作です。
バグゲーのため ねこねこ全体の中では、やや控えめの評価をされています。しかしシナリオにのみに目を向ければ、シリーズの中でも突き抜けていると思います。
注意点としては、上で説明した通り ラムネ、そらいろの事前プレイ推奨の部分
一応 前作ショートverは付属しているので必須ではありませんが…







[8位:ナルキッソスすみれ(非18禁)]

ジャンル:死生観、余命宣告、泣きゲ
公式サイト: http://stage-nana.sakura.ne.jp/narcissu_sumire.htm

作品紹介
感動します… 説明としてはコレで十分なくらい感動できます。
所謂 余命宣告されたキャラの死生観を描いたシナリオでオーソドックスな泣きゲナルキッソスシリーズとねこねこの「すみれ」のクロスオーバーに当たる作品です。
ナルキ1+2(できればゼロも?)とすみれのプレイが必須級なので、やや敷居は高いかもしれませんが、やる価値は十分にあるクオリティと言えます。
特に挿入歌の「半分の魔法」が素晴らしく終盤の演出 ストーリーと組み合わさった爆発力はかなりのものです。
寿命 死生観 病気系の泣きゲーが好きな人は絶対にやるべき







[7位:灰瞳に機す(非18禁)]

ジャンル:殺人、ミステリー
公式サイト: http://teagreen.shisyou.com/kaidou/index.htm

作品紹介
ノベルゲーにおける選択肢の重要性を書いたシナリオ ジャンルとしてはミステリーかな?
兎に角 主人公がカッコいいです。よくある俺TUEE系や爽やかイケメン系ではありませんが、一般人代表のような等身大主人公が泥臭く頑張るのは、やっぱり魅力的に感じますね〜

本作一番の魅力は、一番初めに書いたように、「選択」に重きを置いた部分
たった一つの選択肢でBADどGOODに分岐するわけですが、どちらのENDも良く 特にBADの使い方が上手いです。その為 人によって、どちらがより良いENDか変わるのが面白い所です。
難点は前半パートが非常に退屈な事と同人特有の絵のクオリティが低い事です。
ここが割とネックになる可能性大なのでプレイする際は気をつけてください。







[6位:雪影]

ジャンル:姉、伝奇、冬、田舎
公式サイト:閉鎖?

作品紹介
姉or伝奇ゲー好きにオススメの一品
本作はツイッターの姉好き派意見を聞く限り姉ゲーとしてかなり評判が良いようです。
ちなみに自分は同作品に出てきた幼馴染の方が気に入りましたw
伝奇に関しては姉要素以上に力が入っており、実在する伝承や書物になぞって物語が進んでいるので、かなり本格的な構成となっています。
ネタバレの根幹に関わる事なので詳しく説明は出来ませんが、とある設定と展開が他の伝奇ゲーとは大きく逸脱しているので伝奇ゲーに慣れ親しんだ人ほど驚きが大きいかも…
後 かなりHシーンが多いのも特徴です。どちらかといえばシナリオゲー寄りの筈ですが抜きゲーばりにHシーンがあります。







[5位:120円の春(非18禁)]

ジャンル:雰囲気ゲー、泣きゲ
公式サイト: http://nekoneko-soft.com/main/html/neko15th/120yen.htm

作品紹介
4つショートストーリーから成る短編集であり各エピソード毎に春夏秋冬と120円をテーマに物語が進んでいきます。
起伏があまり無く単調に進んでいくので人によって合う合わないが大きくはありますが、ねこねこソフトに一度でも触れて、尚且つ気に入った人には是非オススメできる作品です。
短編集ということもあり、フルコンプにかかる時間も5〜6時間程度と気軽に始められるのも魅力の一つです。4つとも良いお話ですが、自分は春エピソードが一番お気に入りだったりします。
現状 PC版の入手がやや困難なのでプレイする際はDL版を購入するのが吉







[4位:消えた世界と月と少女]

ジャンル:和風ファンタジー、田舎、伝奇、ミステリー
公式サイト: http://hiyoko-soft.com/sp/

作品紹介
和風伝奇ファンタジーと純粋に創作物として面白くなりやすいジャンルなので、その例に漏れず シンプルに読み物として面白い作品です。10〜5位までは、やや人を選ぶシナリオのものが多かったですが 本作は割と番人受けする設定やストーリーになっています。
絵柄も可愛らしく、盛り上がるシーンも分かりやすいので初心者にも勧めやすい作品です。 ただ、若干伏線回収や描写に難解(説明不足?)な点がチラホラ見受けられるので、その辺りは注意が必要かもしれません。
噂ですが、このあたりの分かりにくい部分の補完エピソードを追加した完全版が出るらしいので プレイするのは、それからでも良いかもしれません。







[3位:ソーサレス アライヴ]

ジャンル:バトル、異世界転生、魔法ファンタジー
公式サイト: http://sorceress-alive.com

作品紹介
消えた世界と月と少女に続き、こちらも分かりやすく初心者向けの作品
異世界転生した主人公が魔法を使ったスポーツのコーチになってチームを優勝に導くといったありがちな設定の前半パート 怒涛の展開、伏線回収の後半パートの緩急が非常に魅力的にです。
前半パートが非常につまらないのですが、恐らくこれはわざと盛り上がりに欠けるストーリーにする事で後半の面白さを際立てているのだと考えられます。
中古に流れるのを防止するためかディスクとDMMアカウントが紐付けされてるので中古では無く 新品を購入することをオススメします。







[2位:灯穂奇譚

ジャンル:伝奇、夏、田舎、ファンタジー泣きゲ
公式サイト: http://www.mizu-
kagami.jp/tousui/tousui_index.html

作品紹介
伝奇パートの作り込みが凄まじい作品で6位の雪影も実際の民俗学を多少なぞってはいますが、本作はそれを遥かに上回る出来栄えとなっています。
作中に出てくる論文は実際の民俗学と歴史、古事記のエピソードと独自の設定を絡めたもので、これを軸に物語が進んでいきます。
また同人ゲーでありながら、商業モノ 顔負けのクオリティで、シナリオ 原画 BGM システム面 全てが当時の一級品レベルであるいえます。同人作品はシナリオが良くても他の部分を削っている場合が多いので、この点も非常に優秀です。
伝奇パート以外のストーリーもシンプルな構成の泣きゲーで普通に感動できますが、伝奇パートに比べると、やや勢い不足なので特に伝奇が好き!といった方以外には極端に刺さることはないかもしれません。
逆に言えば伝奇好きには絶対にやってほしい…







[1位:夏ゆめ彼方(非18禁)]

ジャンル:夏、田舎、泣きゲ
公式サイト: https://www.freem.ne.jp/win/game/15681

作品紹介
2019年12月末のギリギリにプレイしてランキングい1位をかっさらったフリーの同人作品 まだ感想記事は書いてませんが、そのうち書く予定…

短編・夏・田舎・成長・幼少期の思い出と今の現実といった自分の中でもかなり好きな要素を詰め込みまくったシナリオ
誰もが思い出に浸る小学生時代の体験を軸に主人公の成長物語を描いた作品で主人公が神様と出会い父親の死を乗り越えて大人へと成長する話です。
しかしコレは前座に過ぎず 本編クリア後に解放されるエピソード「夏ゆめ彼方」こそ本作品で一番良かった部分です。 ネタバレをしない記事なので詳しくは書けませんが、ライターの思いがこれでもかと伝わってくるストーリーです。 2〜3時間で終わる短編で作りが甘い点もありますが、それ踏まえて尚且つ2019年にプレイしたエロゲの中で1位だと言い切れる作品です。



まとめ

エロゲと言いながら、4作が一般向けの作品となってしまいましたw
どれもこれも癖はありましたが良い作品です。 入手困難なものや高額なものも無いと思うので是非気になった作品や好きなジャンルがあったらプレイしてみてください!

夏の終わりのニルヴァーナ 感想

作品概要・評価点(ネタバレ無)

[作品概要]
生と死、輪廻転生を仏教の観点から描写した珍しい作品
ジャンルとしては成長物語系の泣きジャンルに属していますが、いく世代も前の出来事が現在に大きく関係している部分など若干の伝奇要素っぽさも楽しむことができます。
所謂メインヒロインゲーなので、クオンを気にいる事ができるかどうかがこの作品を楽しんでプレイできるかどうかの分かれ目になってくると思います。

[評価点]
シナリオ:A
キャラ:B+
ビジュアル:B
世界観:B
演出:A+
音楽:A+
オススメ度:A

総合点 84点



作品概要・評価点詳細(ネタバレ有)












[作品概要]


[評価点詳細]

・シナリオ:A
綿密に練られているという訳ではありませんが、ライターの書きたい事がよく伝わってくる良いシナリオでした。
詳しくは考察にて


・キャラ:B+
ややヒロインのキャラが弱いかなといった感じ… 特にナユはもっと恨みの感情を出して欲しかったです。
和尚に関しても良いキャラ付けがされているのに登場回数があまり無かったのはイマイチと行ったところ まぁクオンルートでかなり美味しい役をもらったわけですが…



・ビジュアル:B
少しクセが強い絵柄で人を選ぶかもしれません。 あと横顔が苦手なのか、CGではいくつか崩れている部分も見受けられました。 最終盤のトリを飾る ナユ レイア ミハヤが音楽室に集まる一枚絵では3人とも横顔なので良いシーンなのに絵が崩れていて少し残念


・世界観:B
彼岸という設定ですが基本的にはファンタジー要素無しの準田舎街という感じの世界観 特に真新しさを感じないので舞台設定としては少々平凡


・演出:A+
個人的に本作で一番評価できるポイント
凝っているというよりかは、演出のタイミングや場面が上手いタイプの作品です。 舞台設定が弱くとも世界観に没入する事が出来るのはこのおかげだと考えます。 クオンルートEDでクレジット終了後終わりかと思ったら花びらが舞って続く演出はかなり好き


・音楽:A+
半分以上がクラシックのアレンジverなのでBGMの良さはもちろんのことOPEDが素晴らしく、特にEDの2番と3番の感想からのサビの盛り上がりが非常にED映えする曲に仕上がっていました。


・オススメ度:A
癖のある絵柄さえ気にしなければ、短すぎず長すぎないプレイ時間でシナリオ BGM 演出とどれも高水準なので、かなりオススメのできる作品であると思います。


考察

[考察]

●業(カルマ)について
本作ではヒロインごとにカルマ、俗に言うトラウマがあります。まずはヒロイン毎のカルマとその根本をまとめてみました。


「レイアのカルマ」
レイアの業は信頼していた父親の不祥事とその後のマスコミやクラスメイト父親の側近達の豹変から人は醜いと思い込んでしまうというものです。レイアルートではこの思いが暴走した結果 全てを否定する結果となっていました。

この業は、祖父の浅ましい策略を知り その祖父自らによって殺されてしまった伊予の恨みが元になっていると考えられます。
本編ではレイア父が騙されたのか自分の意思で悪事に手を染めたのかは描写されていませんでしたが、業の根本である伊予の祖父が悪人であった為 シンプルに考えればレイア父も悪人であったのだろうなと推測できます。


「ミハヤのカルマ」
ミハヤの業は自分のせいで両親が死んでしまったことで、それ以降自分は呪われている 幸せになるべきでは無いと思い込んでしまうというものです。

これは仲の良かったものたちの死を助けることなく傍観し 凶事を運んだことにより自らを恥知らずと呪い自殺した美羽の意思が元になっているのだと考えます。
これはヒロイン5人の中では唯一加害者側としての業です。そのため本編では、恨まれる側としての表現が多かったように感じました。(大半がミハヤの思い込みによる部分が大きいが、ナユルートで生を無駄にしてナユの怒りを買う部分など実際にミハヤ側に非がある場面もありました。)


「ナユのカルマ」
ナユが生まれながらにして身体が弱く、生きる意味を見出す前に息絶え、このことから意味のないものを嫌悪するようになってしまいました。コレがナユの業ですが、ミハヤ レイアに比べ、恨みが多い より攻撃的な業であると感じました。他2人は自分で行動を起こす余地があったのに対してナユはそれすら出来ずに死んでしまった訳ですからね…
そうなるとナユルートでの業の暴走は自殺したい願いが叶って彼岸へと来たミハヤに対して願いが叶う事なく死んだナユの八つ当たりといった面もあったのかもしれません。

この業は村人に危険を知らせようと走るが、結局伝えることが出来ず生き絶える那津の意思が根本であり 結果としてナユは想いをはたせなかった自分自身を悔やみ 意味のない人生を憎むようになっていました。


「ノノのカルマ」
ノノの前世である寧々は忠誠を誓う伊予の命令を聞いてしまったばかりに、伊予自身を死に至らしめてしまいます。 結果主の命に逆らってでも伊予を守るべきだと後悔しカルマを抱えることとなります。しかし寧々は輪廻の輪の末 犬として生まれ盲導犬としての規則・命令を破って 自らの命と引き換えにレイア(伊予)を救うことに成功します。そのため他3人とは違い 本編開始時には既にノノのカルマは解消されていました。

主人公の力を借りずに、自力で業から抜け出したノノはホントえらい


「クオンのカルマ」
クオンのカルマは非常にシンプルなもので主人公を愛してしまったというものです。
これに関して私は他キャラと比べると極めて異質なカルマだと感じました。何故なら作中でレイアやミハヤ、ナユのカルマは悪としての描写が強く 解消されるべきものであるとされています。
一方でクオンは主人公を愛した事で結果として不幸になってはいますが、カルマ自体は否定されておらず、カルマからの解消もされる事なくエンディングを迎えてていました。
人を愛するカルマに縛られる事は、恋に落ちるという表現があるように被害を被る事もあるが守ってくれるもの(クオンの場合のカルマ)や不幸になってもそれを吹き飛ばす心の強さ(1200年間記憶を失った主人公を支え続けた意思)があるならば幸せを得る事が出来る 良いカルマであるのだと私は感じました。
これはライターが恋愛ゲームである以上は愛=悪とすることは良くないと考えたからであると思います。


●終章について
終章にて主人公はクオンを消滅させる事が出来ずに自分とクオン以外の縁を全て切る事で世界とクオン両方とも救う選択をしました。
この行動は主人公自身が業(カルマ)から解放されたい思いからとったものであると考えました。


「主人公のカルマ」
クオンと関係を持ってしまったが故にクオンを死なせてしまい、その後不死の特異点にしてしまった事が主人公のカルマです。
そして終章で主人公がクオンを救ったのは、自分自身がクオンを苦しめた罪から解放されたいという思いやクオンに対する罪滅ぼし 愛するクオンを失いたく無いといった思いが混在したこと(つまりは業からの解放)からした事から行った行動であると言えます。

この考えは所謂エゴの部分が大きく レイアの人を拒絶や ナユの八つ当たり ミハヤの自殺のエゴなんら変わりが無いものです。つまりは人間も神も結局は同じ不完全で汚い存在となります。作中では生あるものは人間だろうと神だろうと最終的には涅槃(ニルヴァーナ)へと導かれるます。
最後に涅槃に行くなら、それまでの人生は無意味なのか? エゴの塊を持ち汚い存在として生きて良いのか?
これはナユによって無駄な人生など無い事レイアによって前へと進むこと ミハヤによって死(消滅)は救いでは無い事が否定されています。
ナユ レイア ミハヤ 主人公と同じようにエゴだろうと汚かろうと正しいと思う意思を持って前へと進む事が重要であると、最後には涅槃に行くのだから自分に嘘をつく必要はない 正直に生きるべきだ 大事なのは結果ではなく道中だ
以上がライターが終章で伝えたかった事であると私は考えました。



総評
[総評]
カルマを通したキャラの過去やトラウマを表現したシナリオや仏教を元にした設定 人のあり方を示した描写など非常にクオリティの高い作品です。
またシナリオだけではなくBGMや演出なども素晴らしいため総合的に見れば名作に片足を突っ込んでいる良作と言えます。
個人的にはイマイチ知名度的にパッとしない部分があるのでもう少し有名になってほしい…

WW&F 大正帝都伝奇譚 感想(簡易版)

作品概要・評価点(ネタバレ無)

[作品概要]
大正の日本を舞台にしたファンタジーモノ 時代背景が文明開化の真っ只中のため和と洋の入り混じった雰囲気で、この手の作品が好きな人にとっては堪らない
設定と言えます。
本作と似た設定の他作品は陰鬱としたイメージを持つものが多い印象ですが、WW&Fはキャラの掛け合いに力が入っておりコメディチックに話が進んでいきます。そのお陰で序盤から物語を楽しむ事が出来るのでこの点に関して言えば(触手・陵辱要素さえ気にしなければ) かなり初心者向けの作品とえ言えます。

注意点として重要な箇所はストーリーが中途半端で終わっている部分です。
登場キャラが出揃って後半戦 伏線回収パートの流れの中 突然のぶった切りENDだったので、本来は続編ありきだったのかな?とか思ったり思わなかったり…
どちらにせよ未完の作品であるのは事実なので、その事を覚悟の上でプレイしないと微妙な気持ちになる可能性が高いです…


[評価点]
シナリオ:B+
キャラ:S
ビジュアル:S+
世界観:A+
演出:B+
音楽:B+
オススメ度:C-

総合点 80点





感想(ネタバレ有)
伏線回収前にお話が終了してしまっているので今回は考察無しで感想のみ書いていこうと思います。

●絵の魅力
プレイしていて一番良いと感じたのは、やはり原画家さんのイラストと塗りです。 コメディ寄りの作風に合わせた可愛いらしく描かれたキャラデザとエロさやオドロオドロしさを感じさせる陰影を強調した淡い塗りが良い塩梅に合わさった良いデザインとなっています。
HCGが全体の9割を占めていて通常CGの数は少ないのでですが、個人的にはもう少し通常CGを見てみたかったりします… この良さは現在の綺麗すぎる絵柄には絶対出すことの出来ない強みでしょう。

●ストーリーとキャラ
未完で終わっているとはいえシナリオもかなりの面白さを持っていました。
ストーリー自体は正直言って特筆すべき点はあまり無いのですが、魅せ方が非常に上手いです。
本作には猫面相やミコミコといった特徴的なキャラが多いのですが、シリアスの合間 合間に、このようなキャラ達の掛け合いを挟む事でメリハリが出て、いかにも実際よりも面白い話が展開されていると錯覚してしまいます。(メリハリ抜きにしても、ある程度楽しめるストーリーです)
恐らくこのキャラ達がいなければ全く同じ話だとしても、良さは半減されてしまうでしょう…


●演出関係について
次回予告や猫面相の気球など古い作品の中では、かなり頑張っている方だと思います。 一番驚いたのは立ち絵の目パチで2019年の作品でも導入しているのは珍しいと思います。
演出など細かい部分にも力が入っていただけに未完成なのが悔やまれます。





まとめ

可愛らしく作風にあった絵柄、魅力的なキャラ同士の掛け合い、独特の雰囲気を醸し出す世界観とシナリオ 凝った演出と名作の片鱗を見せる本作
実際未完でなければ、無名の今とは違ってかなりの知名度を誇っていた可能性も十二分にあると思います。
可能性はほぼゼロといっても良いですが、続編が出ることを願わずにはいられない、そんなエロゲでした。

femme fatale 感想(簡易版)

作品概要・評価点(ネタバレ無)

[作品概要]
同人メーカーinspireが出した大正時代が舞台の探偵モノ作品
陰鬱とした洋風の雰囲気は他のエロゲには無い独特の良さを持っておりシナリオも一定以上の水準に達している良作です。
2001発売+同人という事もあって絵が古く システム面は少し扱いにくいこと、テーマ及びストーリー展開が少し重めなど難点はあるので万人にオススメできる作品ではありませんが、イノグレ系列が好きな人には是非プレイしてもらいたいと個人的には思いました。


[評価点]
シナリオ:B+
キャラ:A
ビジュアル:C+
世界観:A
演出:C
音楽:C
オススメ度:B-

総合点 70点



感想(ネタバレ有)

●本作について
基本的なストーリーの流れは、他の探偵モノと大きな変わりは無く、発生した殺人事件を主人公が解決するために奔走するといったシンプルな構成になっています。
所謂推理パートや捜査パートなどはありますが、選択肢が1つだけの一本道で事件の犯人もストーリー半ばで判明するので謎解き要素は薄いといえます。そのため、ジャンルとしてはミステリーというよりかは、サスペンスに近いです。


●シナリオについて
一言で言えばエロゲ(18禁)のメリットを活かしたストーリーとなっています。
「未成年淫行」「女の性」「人身売買」など一般向けでは表現し辛いテーマを扱っており、それらを作中の事件で許されざるタブーとして描写しながBADENDでしっかりと陵辱シーンを入れる事でエロゲーらしいエロとしても表現されていました。

残念な所としては、上で書いたテーマ性を持たせたシナリオに比べると本作の中核である探偵捜査部分が少々おざなりになってしまった事でしょうか…
殺人事件の犯人も少しカンが良い程度の人ならかなり序盤で目星をつける事が出来、よくあるミスリードやドンデン返し叙述トリックも無く中盤でアッサリと正体が判明してしまいます。
更に陰鬱とした雰囲気を出すためか、物語の起伏が少ないので盛り上がる事なく事件が幕を閉じてしまいます。
もう少し自由度を持たせてトリックなどにも力を入れたら設定的に人を選ぶとはいえ十分名作になりうるポテンシャルを持っているだけに残念と思ってしまいました。


●メインテーマについて
本作品はいくつものテーマが見え隠れしていましたが私的には特に「女性の性」を主として描かれていたように感じました。
作中に登場する主人公の従姉妹や幼い少女達 そして謎の教師フレイヤ・カーシェンダーなど、ほぼ全ての女性キャラに意識的にせよ無意識にせよ男を惑わすような表現や描写があり、それによって男が不幸になる展開もありました。
「男が欲望を抱く女の身体に産まれた事が既に悪であり罪である、償うためには、その罪たる身体を使って欲望の捌け口となる事こそが女の宿命である。」
作中では神話を通してこのような事が語られています。言ってしまえば単なる屁理屈な訳ですが、この例題 女が悪かは結局最後まで否定される事は無く有耶無耶で幕が閉じられてしまいます。

実際に性欲に取り憑かれ不幸になる男もおり 意識してそれを行う女は魔性の女と言え 悪と断定できます。では無意識に行う女は無罪なのか?無意識でもその身体で男は被害を被っている。では罪なのか?無意識ではどうしよもなく、それこそ運が悪いに過ぎなく理不尽な宿命だと言える。
このように、どちらが正解なのか白黒つけるのが難しい問題です。本作ファムファタールでは、事件の犯人(女性の身体に取り憑かれた男)をフレイヤ(無意識なる魔性の女)が殺す事で、女が罪かは兎も角、上のような考えを持つ男は悪として物語は終わりを迎えました。



まとめ

いくつか難点はあれど、女性をテーマによく練られたシナリオは面白く、それでいて読了時に様々な考えが浮かびます。
有名か無名かと言われると、かなりの無名に位置しますが、個人的にはもっと有名になっても良い そんな風に感じた作品でした。

クロスコンチェルト 感想


作品概要・評価点(ネタバレ無)

[作品概要]
ロスコンチェルトは、あっぷりけが初めてクラウドファンディングで制作した作品です。
世界観的にはコンチェルトノートと同一であり、御霊の設定なども受け継がれています。そのため必須ではありませんが物語を最大限に楽しむためにはコンチェルトノートと、そのFDである黄昏の先に登る明日のプレイが推奨されます。
内容としては恒例の伝奇ゲーで高い完成度で仕上げられていました。

[評価点]
シナリオ:B+
キャラ:A+
ビジュアル:A
世界観:B
演出:B+
音楽:A
オススメ度:B+

総合点 75点



評価点詳細・感想(ネタバレ有)













[評価点詳細]

・シナリオ:B+
綺麗にまとまってはいますが、歴代の作品に比べてパワー不足なのが否めません。割と序盤から霊的なものの存在を仄めかしていたので、シミュラクラのようにホラー要素を大目にしたシナリオにした方が良かったかもしれません。


・キャラ:A
メインである瑠璃は勿論の事その他含め魅力的なキャラが多かったです。
Hシーンの数も多く この部分に関しては、かなり評価できました。


・ビジュアル:A
一時期 迷走していたように感じていた、キャラデザも本作では持ち直していました。 シンセミアを正統進化させた本作の絵柄は、独特の魅力があり個人的にはかなり気に入っています。


・世界観:B
寮が物語の中心となっていますが、登場キャラも少なくコンチェルトノートの時に比べるとイマイチな印象を受けました。


・演出:B+
アッサリ目ですが良い演出です。
世界が色づく描写や最終盤に主人公が瑠璃を説得する場面などは物語を邪魔しないように盛り上げる要因となっていました。


・音楽:S
本作で一番気に入った部分です。BGMは勿論のことOPが素晴らしく 歌詞なしBGMのアレンジverも多く使用されていました。


・オススメ度:B+
面白くはありますが、同じメーカーの別作品の方が完成度が高いと言わざる得ないのでプレイする場合はそちらを優先した方が良いかもしれません…



[感想]
内容としては、いつものあっぷりけらしい伝奇モノでした。コンチェルトノートの外伝的な扱いなので、御霊の設定だけでは無くカレンダーの落書きや寮生活など前作をプレイした人にとっては楽しめる小ネタがありました。
また同じ曲を使った1stOP 2ndOPなどの演出や敬語妹、サブキャラ攻略可能などからシンセミアも少し意識して作ったように感じます。

シナリオに関しては、もうひと頑張りといったところでしょうか。
総プレイ時間は大体25〜28時間程度と平均的ですが、フラグメントやHシーン サブキャラも攻略可能な為どうしてもメイン4人のシナリオに厚みが足りなくなっています。また本作のメインである御霊の謎についてもコンチェルトノートで大部分を語られおり伝奇モノの魅力である謎やそれに伴う恐怖などが薄れてしまっています。結果として1キャラ攻略すれば、物語の全貌が大体分かってしまいます。
とは言え設定の練り込みや、伏線回収なども一通りされていますし、プロローグでの槍投げシーンやラピスラズリなど盛り上がる場面はあるので全くダメかと言えばそうでもなく良作一歩手前の出来と言えます。



考察・気になった点

[考察]
今回は伝奇部分を中心に考察していきたいと思います。


●荒御魂について
人の負の感情を操り、前へ進む為の方向性へと転化させる事で村を発展させる力を持つ御霊で「保存」の特性を持つ。

以上が本物語の核となる御霊の設定です。コンチェルトノートでは完全に悪とされていたモノをプラス方向で話に組み込んだ形になります。
この荒御魂に関しては本編よりも、むしろフラグメントでの過去編で語られてることが多いので、そちらをまとめてみます。


・朔日〜さくじつ〜
柊の葉に荒御魂を払う力がある理由が説明されているエピソードです。
この時代で生贄になった巫女が慕う姉の願いである「柊の葉が魔除けなら西条の魔も払って欲しい」といった願いと「保存」力が混じり合い 結果的に柊の葉が御霊に対して有効となりました。
自らが慕う姉が嘘つきにならないように毒無き柊の葉に毒を与え憧れの姉を最後まで憧れとして見るための少女の思いが具現化した形と言えるでしょう。


・上弦~あのひ~
御霊を通して未来を知る巫女の人生が語られるエピソード
ここでは、透子ルートの予言書が生まれたきっかけと開発地区がそのままの放置されている理由が判明します。
この時の巫女は、未来の世界を知ることで外への憧れの思いを抱いたまま生贄となっています。即ち、この時点で荒御魂の中心を保存して守り人々を外へと広げて発展させる性質が出来たと推測できます。


・宵待月~みらい~
兄との恋が実らず死んだ最後の生贄のエピソード
御霊の人格は過去の生贄から波長の合う魂が元になる設定があります。(本質的には同じであるタマと奇御霊の性格が違うのはこのせい)
本編にて度々登場した御霊の幽霊の人格は、宵待月~みらい~の少女が元となっている私は考えました。この考えは主人公が荒御魂に見初められた理由にも繋がるので以下にまとめます。


●主人公が荒御魂の生贄となった理由

主人公である悟は荒御魂の生贄に選ばれてしまいますが、これに対して本編ではいくつかの理由が推測されています。



説① 西ノ宮の血を継いだ能力者だから

悟こそが本来の見鬼であり、腕と母親の
命を犠牲に不完全な未来視を手にした瑠璃は紛い物のため生贄に選ばれずに悟が選ばれた説


説② 荒御魂の嫉妬

説①の見鬼であることに対する付属の説
生贄になり不自由な思いをしてきた自分たちと同じ境遇なのに幸せに生きている主人公に対し八つ当たり気味に取り憑いたというもの


説③ 同調する力を欲したため
主人公が荒御魂の力を借りずに負の感情を原動力としていたので、興味を持たれ見初められたという説です。
これに関しては、主人公の性格は西ノ宮の血を継いだ母から力を貰ったからであり、他の柊町の住民と同じく荒御魂の力を使っているので無いでしょう。
荒御魂がこの事に気づかなかった場合は別ですが…


以上が本編で語られていた説ですが私は、この3つとは別の主人公に対し羨望の念を抱いたからだと思いました。
私が幽霊の人格元であると考えた宵待月~みらい~の少女マチは兄、年の近い同性の従者2人共に成長し悲恋を経験した後に生贄として死んでいます。
つまりは瑠璃と環境が非常によく似ているのです。自分とよく似た境遇でありながらともすれば兄妹での恋を成就しかねない八重垣兄妹に興味を惹かれたのでしょう。
これだけだと説② 御霊の嫉妬と然程変わりませんが、大きく違うのは抱いた感情です。瑠璃に自分を重ね 悟に対してはかつて好きだった兄を重ねて疑似的な恋をした… つまり嫉妬や悪意といった負の感情では無く 好意 善の感情が素の行動だったのでは無いかと私は考えました。 荒御魂は負の感情を司るのでどうしても主人公達に対して行う事は悪意的な面が大きくなってしまっていた幽霊ですが、本質的には、ただの恋する女の子にすぎないと言えるかもしれません。
そもそも幽霊の声のトーンや言っている内容自体に悪意は感じないですし、一緒に居て欲しかっただけにしか感じませんしね。



[気になった点]
未回収の伏線も無かったですし、シナリオ的に気になった点は然程ありませんでした。
あえて言うとしたら、やはり伝奇部分の密度をもう少し上げて欲しかったなとは思います。あっぷりけ作品の特色の1つですし圧倒的にプレイ時間の少ないシミュラクラの方が伝奇パートが濃いのは如何なものかとは思います。



総評
[総評]
初のCF コンチェルトノートの続編 長い制作期間などの前情報があったので少し期待しすぎたかな…といった印象の本作品 他メーカーと比べたら十分な出来なので決して悪くは無いのですが、どうしてもシンセミアなどと比べると見劣りしてしまいます。
しかしながら瑠璃ルートラストのありがちなハッピーエンドである生まれ変わりを否定した演出は見事ですし、ラピスラズリの勢いは過去作にも負けないものでした。 総合的には十分なクオリティであると思います。

ぼくのたいせつなもの 感想(簡易版)


作品概要・評価点(ネタバレ無)

[作品概要]
本作品は、らくえん〜あいかわらずなぼく。の場合〜におまけ枠で付属している短編作品でロボットやアンドロイドモノによくある人とAIの違い 人権や倫理観についてをメインテーマとして書かれたシナリオになっています。
2〜3時間で読み終わる短いストーリーですが、非常にメッセージ性の強く読んでいて面白い作品でした。

らくえん付属verはボイス無しですが、月面基地前プレミアムBOXverやDL版はフルボイスとなっているので本作が気になった方はこちらの方を購入した方が良いかもしれません。


[評価点]
シナリオ:A
キャラ:A
ビジュアル:B+
世界観:B-
演出:B
音楽:C
オススメ度:A

総合点 77点



感想(ネタバレ有)

●メインテーマ
前提としてヒロインである冬木茉優子はケミカルと呼ばれるロボットであり本作の世界では生物学的にも法的にも「物」であって「人」では無いとされています。故に調教目的の痛めつけや、そのケミカルが作られた目的のための調節(人格の書き換え)などが許された存在です。
そんな世界観のなか冬木のケミカルとしての役割は病気の主人公のドナーとして死ぬことでした。例え人では無いとされていても見た目中身共に人にしか見えない存在の命をエゴだけで奪ってしまうのはおかしい!と主人公の考えから物語は展開されていきます。つまりケミカル(意思を持った“物”)の人権や倫理観についてが本作のメインテーマ言えるでしょう。


●ケミカルは人なのか?
この疑問は、「ぼくのたいせつなもの」という作品においてもっとも重要な部分であると思います。
私の考えを結論から言ってしまうと、ケミカルそのものは「物」であると考えてしまいました。 では冬木は物なのかと言うとそうではありません。ケミカルはあくまで器であり重要なのは心の有無であるためです。つまり冬木は物(ケミカルの体)に人の心が宿った存在だと言えます。
人も言ってしまえばたんぱく質の塊であるモノに心が宿った存在です。この考えだと人とケミカルの物と人の境界線は曖昧になってきてしまいます。実際作中の主人公も段々と身体の機能が無くなっていき反応もか細いものになっていくヒロインを見て何度も物と人どちらで接すれば良いか迷っていました。しかし冬木が人として過ごしていた時の明るい笑顔、その面影をいつまでも失わない すなわち心がまだあると考え最後まで「人」として接しぬきました。
考え方により物にも人にもなり得る存在
それがケミカルです。


●人のエゴ
エゴイズム 自尊心 利己主義 といった意味で使われる言葉ですが、本作のサブテーマといってもいいほど多くの場面で描写されていた部分です。
主人公の命を救うために間違った行動だと理解しながらケミカルを作った父の行動や冬木に嫉妬した野和、他者へ攻撃または関係を排除する事で自己を確立する秋津や主人公など挙げればキリがありません。
こんなエゴですが、ある意味では最も人間らしい考えであるとも言えます。
ここで冬木が最後に行った行動を振り返ってみると、彼女は自らの思考が完全にケミカル化するまえの願いである主人公のために犠牲になる思いを口にします。主人公が悲しむ事を理解し、自分自身を人間として扱うなら決して拒否できない思いを願ったのです。これは言ってしまえば自己満足だけの行動であり完全なエゴです。つまり、最も人間らしい考えであるエゴをケミカルである冬木が最後に主人公に押し付けたのです。これはほぼケミカル化していた状態でも最後まで人しての考えは失っていなかった、主人公が接してきたように彼女は「人」として生を全うしたのだと私は考えました。


●タイトルの意味
本作のタイトルは「ぼくのたいせつな“もの”」となっています。大切なものとは、勿論冬木の事ですが、なぜ最後まで人して接する事に決めた主人公が彼女をもの扱いしているのか?
これは、主人公にとって冬木そのものだけでは無く彼女のいた環境や考え 最後に残した思い全てをひっくるめて「もの」であるためだと考えました。つまりタイトルの言葉は、彼女をもの扱いしているのでは無く人である彼女を取り巻く全ての「もの」を大切なものとして扱って生きていく、決意の現れであると感じました。


●まとめ
本作は、元々がらくえんのおまけシナリオですし、似た設定であり知名度の高い生命のスペアという作品が存在している事もあってか、非常にマイナーなエロゲです。
しかし静かながらパワーのあるシナリオで読んでいて面白いので是非沢山の人にプレイしてもらいたいです。

消えた世界と月と少女 感想


作品概要・評価点(ネタバレ無)

[作品概要]
誰もが知っている「かぐや姫」という昔話を軸に謎を展開していくオーソドックスな伝奇モノです。
基本的にはホラー&ミステリーですが、異能バトル要素も取り入れており退屈にならないようなストーリーとなっていました。
伏線回収もしっかりしており全体的に完成度の高く良作と言える作品です。


[評価点]
シナリオ:A+
キャラ:A
ビジュアル:S
世界観:B
演出:B-
音楽:A
オススメ度:A

総合点 82点



評価点詳細(ネタバレ有)













[評価点詳細・感想]

・シナリオ:A+
よく練られていながらシンプルな内容のため理解がしやすいシナリオです。
ミステリー 伝奇 感動とどの部分においても疎かにしておらず十分なクオリティに仕上がっていました。
一方で個別ラストのマンネリや敵キャラの持て余しなどの改善点も多々あり


・キャラ:A
メイン サブ共に魅力的で特に表十二単の面々はデザインや設定が非常に素晴らしく、本作の要といっても良いかもしれません。


・ビジュアル:S
綺麗よりも可愛い寄りの絵柄なので明るめの塗りがよく映えたデザインになっています。
ホラー場面では、絵のタッチを変えてテキストに対して浮かないように配慮されており、その点も個人的に高評価ポイントです。


・世界観:B
少し規模を大きくしすぎかな?といった感じです。
竹取物語がモチーフなので月を舞台にするのは当然と言えば当然なのでしょうが、できれば基本は地球で物語を展開して欲しかった感はあります。
とは言え最期の謎に使われるトリックのオチがオチなので難しいかもしれませんが…


・演出:B-
ややマイナスポイント
心臓の鼓動や主人公が違和感を覚えるシーンなどで特徴的なSEを流す演出が多用されますが、どうにも本作の世界観にあってないような気がしました。
特に緊急地震速報のようなSEは最後まで慣れる事なく作品を終えてしまいました。


・音楽:A
作品の雰囲気に合わせた曲調が多く、「otherworldly atmosphere」などは盛り上がりで使用しやすく静かなシーン悪目立ちしない名BGMであると思いました。
挿入歌の中では星霜の轍が頭一つ抜きんでていて、発売後も話題になったらしいです。


・オススメ度:A
ややシリアスがキツイのと若干超展開寄りなのを除けば理解しやすい初心者向けのシナリオと言えるでしょう。
逆に言えば後付けや無理矢理な展開が無い分ある程度の数をプレイした人だとオチの予想がつきやすい作品かもしれません。

[感想]
昔からの伝承が実は宇宙人由来のものであり、登場キャラの大部分がその血を引いている。
このような元祖伝奇モノである痕をリスペクトした設定にしっかりと作り込まれたシナリオが秀逸の本作品。
共通の謎と失速感はあるが重要な謎の鍵を探す個別 トゥルーの答え合わせ、そして最序盤の選択肢の意味と感動のラストと構成が良く無駄な描写をなるべくしないように配慮されたストーリーでした。変に難解な表現や設定を使用しておらず、分かりやすいのも伝奇モノとしては良い部分であると私は思います。
ガチガチのシナリオゲーが評価されにくい中ギャグ要素を極端に排除した作品を出してくれたのは素直に喜ばしい事です。 欲を出すならば、魅力のあるキャラ設定を活かし個別の恋愛描写やイチャラブにも力を入れたキャラゲーとしても楽しみたかった感はあります。




考察・気になった点

[考察]

今回は各ルートごと描写が少なく考察が必要だと思った疑問点を中心に書いていきたいと思います。

〜共通ルート〜

●血文字の警告文を書いた人物
この出来事が起きた時に主人公一行が調べていたのは母である沖名明に関してであり、この情報を知られて困るのは十二単よりは月の使途側です。よって月の使途がおこなったと言えるでしょう。
では、月の使途の「誰」が行ったのか?
私は「美衣奈」か月の主側近の「姿を消す能力者」この2人のどちらかであると推測しました。美衣奈だった場合は月の使途メンバーだったので、ある程度は明の死に月の使途が関係している事を知っていて主人公たちを守るために行った行動 一方 側近の場合は文字通り警告であり知られると不味い情報だと判断したのだと思います。
主人公は警告文発見の際 姿は見えずとも視線のようなものを感じています。トゥルーにて側近の能力は姿のみで気配までは消せないと判明しています。そのため状況的に判断するのならば可能性としては、3割で美衣奈 7割 側近といったところだと私は予測しました。


〜つばめルート〜

●椿 失踪の理由
椿に関しては、クローン技術発展のための実験台にすぎないのだと思います。
瑠衣ルートで判明する過去の神隠し=月で散吉郷住民のクローンを作り終えたら地球に戻しているという事なのでしょう。 つばめは幼少期に神隠しに会いクローンである椿が誕生したのちに地球に戻されたと考えられます。椿が失踪して会えなくなったのは、月に連れ戻されたから筋が通ります。
実験施設から逃げ出した椿がつばめ母に保護された部分 もちろん施設が月にあるわけですから、つばめ母も月にいることになり、つばめ母は月の民である可能性もあります。
もっともこのルートに関しては特に大筋との関連性は薄いと思いますが…


〜杏子ルート〜

●白八と杏子の関係
このルートでは白八の存在がよくわからないポイントです。杏子の兄である彼ですが、いつ兄となったのでしょうか?
幼少期武留を助けたのは間違いなく十二単と名乗る白八であり、この時点では地球にいた事になります。月の民である十二単がなぜ地球にいたのか?彼の正体は何なのか?

この謎は杏子と白八の関係から、ある程度まで推測する事ができます。
羅刹に偽物の妹と言われた場面から、この時点の杏子と白八の関係は単純に血が繋がってないorクローン体に過ぎないこの2つの解釈ができます。

クローン体の場合はオリジナルの杏子とは血が繋がった地球人で十二単にスカウトされ基本的には地球で活動を行なっていた。武留を助けたのも地球での活動中の出来事といった解釈
血が繋がってない場合は、杏子とは何の関係性もない月の民であり武留や杏子の記憶は月に連れてこられた時に植えつけられた作りもの記憶と考える事となります。


〜瑠衣ルート〜
タイムリープのトリックに関する伏線や瑠衣なりの異能力およびかぐや姫の解釈が語られるルート 基本的には曖昧な部分は無いが、アキラナオキの描写で一部考察の必要な点があります。

●アキラナオキの処刑について
アキラナオキの正体はトゥルールートで主人公の母である沖名明である事や彼女がかぐや姫殺しの罪を被り処刑された事などが判明します。そして この処刑方法が瑠衣ルートで語られていますが、その内容は「器の儀」によく似た方法がとられています。
これは、かぐや姫が死んだ直後でセレネを閉じ込める贄を早急に用意する必要があった故に処刑ついでに明の死体を有効利用したのだと推測できます。
ここで疑問点として上がるのがアキラナオキの死が地球に伝わっている理由です。 彼女は月の民である事は明白であり五伴緒や十二単が月にいる事から処刑も月で行われたと考えるのが自然です。では何故地球で新聞記事が書かれ器の儀で使ったであろう死体も地球の警察が処理したのか?
この事件を知った後に瑠衣がプレミアのついたアキラナオキの本を手に入れた描写があるため、月に作られた散吉郷にのみに用意された情報では無いと分かります。なぜならば
アキラナオキ怪死事件発覚→本プレミア化→瑠衣が本を確保\ここまでは地球の出来事\→瑠衣が主人公に事件を伝える
このような流れになるからです。
器の儀で用意された贄に関しては情報がありませんが、素直に考えればセレネを封じ込めた死体を処分してしまうのは、不味いはずですが地球の警察が発見した以上処理されたと考えるのが一般的でしょう。
こうなってくると益々 五伴緒がわざわざアキラナオキの死体を地球に放置ないし運んだのが謎になってきます。残念ながら、この疑問に関して私は納得のいく答えを見つける事ができませんでした。


〜美衣奈ルート〜
他3つに比べて圧倒的に情報量の多いルートですが、それ故に力も入っているのか矛盾点などはありませんでした。
しかしひとつだけ気になった用語があったので考察していきたいと思います。

●ロストナンバーについて
月の使途アジトにて主人公に対して使われたロストナンバーという言葉
これは文字通り手の甲にあるナンバーが無い被験体の事を指しているのだと言えます。
美衣奈ルートでは主人公がロストナンバーだと発覚した際即処理せよといった命令が下るのですが、この理由は2つほど考えられます。

・説①
番号が無い=最後の生き残りである主人公の可能性ありとなりアキラナオキ蘇生のために器の儀を行う月の使途は輝久夜を成長させる必要が無い。
そのため、とっとと殺し腕だけ持っていこうとした説

・説②
共通ルートの時に生活していた村人の生き残りと判断し、その場合表向きループのカラクリに気づいている可能性アリと思われた。
この時アジト内には浮老がおり表向き十二単と協力関係にある月の使途は輝久夜成長の失敗となり得る存在に対し対処しなければならなかった説

どちらの説でも話の流れ的に違和感なく展開する事が出来ると言えます。


〜輝久夜ルート〜

語り部について
瑠衣及び主人公月の王ENDにて語り部さんが登場します。
輝久夜タイムリープENDで分かる事ですが語り部=元祖かぐや姫であり、輝久夜が身代わりとなっていない世界線では既に死んでしまった身です。では何故存在し得ない彼女が登場したのか?
ここからは完全に妄想となるのですが、歴史改変前にいた語り部はエピローグにて輝久夜を復活させたのちに、IFの世界である主人公月の王ENDの世界選に能力を使い移動をした歴史改変後の語り部だと考えると面白いかもしれません。

語り部(元祖かぐや姫の能力)
タイムリープと穢れの浄化が、かぐや姫の能力なのに世界線移動(タイムリープでは無い)が出来るのか?という点ですが 私は可能だと考えました。
そもそも元祖かぐや姫の力に確定した情報は無いため描写のみで判断するならば、その力とは「能力使用者が思う他者を幸せにする願いを叶える能力」となります。 ここで重要なのが「能力使用者が思う他者の幸せ」という部分です。つまりセレネ誕生の原因のように結果として他者の不幸となる願いにも力は発揮されるという事です。
よって月の王ENDの出来事を語り継ぐ事が主人公及び輝久夜にとって幸せだと判断したから、語り部は能力を使い世界線移動を成功させたと私は考えました。


〜全ルート〜

●ライターが伝えたかった事
穢れ(悪)を穢れ(悪)と認めなければ、それに対する対策を講じる事もできなくなってしまう。穢れ(悪)を認める事でその行動は初めて浄化(正義)となり得る。つまりは穢れ=浄化となる。
これは作中で述べられていた事を要約した言葉です。
もし上でおこなった語り部の能力の考察があっているならば、他者の幸せを願う輝久夜と自己の防衛を願う主人公のは穢れと浄化のように相反する存在であるとなります。相反していながらお互い惹かれあった輝久夜と主人公達により穢れ=浄化を表現したのだと考えられます。


この穢れを認めてることで正義となりうる事は作品の世界だけではなく現実世界へのメッセージでもあると思います。作中では災害といった表現がよく使われていたように感じました。セレネや共通で主人公が起こした土砂崩れなどが筆頭です。
環境破壊を繰り返す人間に対し、いつかセレネのように災害のしっぺ返しがくる
それに対抗するには、環境破壊=悪だと認める事から始めるべきだ。本作全体を通して このようなライターの警告が聞こえてくるようなシナリオであったと私は感じました。



[気になった点]
やはりシステム面に関しては少々気になりました。必要最低限の設定項目しかなく2018年に発売された作品としては、かなり低レベルなものだと言えます。
この部分を改善し十二単のストーリーを追加した完全版が出る可能性があるらしいので、それを待つのが正解なんですかね…?
個人的にはシステム改善パッチとかを配布すべきなのかなぁ…?とか思ったり思わなかったりしました。

後はカルマに関しても残念だった言えます。かぐや姫と主人公 輝久夜を繋ぐ重要なポイントの1つにこの「カルマ」があるのですが、描写があまりにも少なすぎてなんとやらといったところ…
公式サイトに載っている情報の方が本編で提示された情報よりも、詳しく書かれているってどういう事なんですかね?



総評・余談
[総評]
一部酷評もしましたが、全体的なクオリティが良く総合点も高いです。
どちらかと言えば超展開やセカイ系苦手な自分でもかなり楽しむ事が出来たので、セカイ系が好きな方ならば、気にいる事間違いなしだと思います。
上で書いた完全版の噂が本当ならば是非予約して発売日当日に楽しみたいと思えるレベルでした。
初心者向けにはちょっとクセが強いかもしれませんが、伝奇モノの入門編として非常に勧めやすい、そんな作品でした!




[余談]

完全に余談となりますが、個人的にタイトルの真ん中にあるウサギが凄く秀逸だと感じました。
本作のメインとも言える月とそれに関係したウサギ そして平仮名の「と」をモチーフにしたデザインですが「ウサギ=兎=と」 このように「と」をデザインに入れなくてもシッカリと「と」と読めるようにされているのは良いなぁと思いますね〜

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