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黄昏のエロゲ感想

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雪影 感想

作品概要・評価点(ネタバレ無)

[作品概要]
姉+伝奇ゲー
基本的に攻略ヒロインはメインである深雪だけで5つあるENDのうち4つが彼女のルートとなっています。
そのため本作を楽しむためには深雪に魅力を感じるかどうかが重要になってくるので姉キャラが根本的に苦手な人はやめた方がいいかもしれません。
とはいえ民俗学部分の作り込みはかなりしっかりとされているので伝奇パート目的に絞ってプレイするのも一興ではあると思います。


[評価点]
シナリオ:A+
キャラ:A
ビジュアル:B-
世界観:B-
演出:B
音楽:B+
オススメ度:B+

総合点 79点



評価点詳細(ネタバレ有)












[評価点詳細]

・シナリオ:A+
ファンタジーに見せかけた前半とそれを覆す後半 現実路線の民俗学部分
主人公が謎を解明する気が皆無なのでワクワク感は抑えめですが、じわじわと面白さが伝わってくるストーリーでした。


・キャラ:A
姉ゲーですが、自分はサブキャラの紫子が非常に刺さりました。好きになったというだけで、ここまで主人公に尽くすヒロインも珍しい気がします。
逆に深雪さんは、テンプレ姉感がしてどうにもといった感じ…


・ビジュアル:B-
塗りは綺麗ですが、どうにも安定感がなく同一人物に見えないCGもチラホラと見られました。
立ち絵の種類が多いのは高評価ポイント


・世界観:B-
閉ざされた田舎故の閉鎖空間的な怖さが描かれたシナリオながら、どうにも伝わってきづらい世界観でした。 良く言えば安定感のある 悪く言えばイマイチ パッとしない舞台です。
霜神伝説が掟などとして根付いている時代錯誤な村などの設定にした方が個人的には良いと感じました。


・演出:C
特にこれといった演出は無かったです。


・音楽:B+
雪国らしく静かなBGMが多いため印象には残りづらいですが、良い曲が多かったです。
EDで流れる和楽器風の曲は作品の雰囲気ともあっていてお気に入りの1つ


・オススメ度:B+
少々思い描写はありますが、十分許容範囲内だと思われますし、システム周りキャラデザなども一定レベルの基準はみたしてます。
シナリオが良いのでオススメはしやすい作品です。


感想・考察・気になった点

[感想]
1番の評価ポイントはキモである伝奇パートでファンタジーに逃げなかった事です。
田舎の雪国に伝わる雪女の伝説 冬だけ現れる姉と名乗る謎の女 戸籍が無く風呂が苦手 ここまで揃えば深雪=霜神=人間では無いとして霜神の伝承をなぞらえて最後に深雪が消滅する感動ストーリーに持って行きたくなるのが普通です。
しかし本作は、あくまで伝承には本来の理由があり 霜神も蓋を開けば飢饉時に食料となった山人の事だと描写しています。
伝奇モノは元祖である痕がファンタジー要素沢山出会ったため以降の作品も多かれ少なかれ現実離れした設定を組み込む事多いと言えます。そんな中しっかりと伝承に理由をつけて現実路線で正面から書きあげたライターさんは流石であると言わざる得ません。
このような作品がもっと増えて欲しいと願うばかりです。


[考察]
本作は「霜神伝説」「山人」「禁忌」
この3つのキーワードを元に話が展開されていきます。

◯霜神伝説
もっとも話の中核を担っている設定
簡単に説明すると霜神と呼ばれる神が飢饉時に現れ自らの体を砕き、里に富を与えるといった伝承となっています。

中盤までは、この霜神が人ならざるモノとして実際に存在するかのように描かれていますが、深雪END3にて霜神とは村人に対し飢饉時に献上された山人の事だと判明します。
自らの体を砕き里に富を与えるとは文字通り 自らの体を切り取られ食料として里に振る舞われたことの比喩です。
食人という禁忌を犯した罪を誤魔化すため自分たちが食べたのは人では無く神だからセーフという意味を込めて霜神伝説が誕生しました。

◯山人
山人とは山で暮らす人々の事であり、本作独自の設定では無く実際に柳田国男と呼ばれる民俗学者により提唱された民族の総称です。もっとも自分は、本来の山人をイマイチ把握しきれていないため、ここでは雪影の設定のみで書いていきたいと思います。
雪影における山人とは、上山村周辺の山に古くから住んでいる民族のことである。この人々は殆どを山で過ごし冬になると里に降りて生活するといった風習があるといった設定です。
この際に上山村にメリットが無ければ山人を里に住まわせる理由が無いのだが、ここで関係してくるのが上で説明した霜神伝説です。つまり生贄を貰う代わりに冬の間のみ山人を匿っていました。
そのためこの食人によって繋がっていた関係が理由で、作中の上山村では山人の話題が禁忌になっています。


◯禁忌
ここでの禁忌とは2つの意味がある。
1つが三大禁忌と呼ばれる、「殺人」「食人」「近親相姦」のことであり時代地域問わず基本的にこの3つが禁忌の中でもレベルが高いとされているそうです。
2つめの意味が約束事としての禁忌です。作中で鶴女房や雪女などのお伽話になぞらえて説明されていて、鶴女房ならドアを開けるな 雪女なら秘密を話すなといった約束事のことです。
基本的にこれらのお伽話では主に男側によって破られ悲恋となって終わっています。その流れを汲んでか本作では主人公約束を破り姉が消えるといったENDが多いです。もっとも雪影の主人公と姉は鶴女房や雪女などのようにはっきりとした約束を交わしたわけではありませんが…


◯本作が伝えたかったこと
本作が伝えたかったこととは、その場に留まって燻り死ぬくらいなら前へ進めといったテーマを感じました。
作中で三大禁忌を破るほどの変化を見せたのは、深雪 主人公 主人公の父のみですが、一般的なレベルでの変化で前へ進んだキャラは多いです。
紫子は主人公に対する恋心で女らしく変わり 香里も紫子と同じく恋心で引っ込み思案な性格を直しています。
友文、道成も自らの進路を決め前に進んでいますし、姉である深雪に至っては人を食べてでも生き残り主人公父との約束を果たそうとしました。

では主人公はどうか?END1〜3では姉の正体から目をつぶって停滞し続けていた主人公は最後には姉を失い心を壊しています。
一方で紫子、トゥルーENDでの主人公は前へ進むことを選び幸せを掴んでいます。
紫子ENDでは止まっていた時計を新しくし家を立て直す決意をし 姉のいない世界でも紫子と新しい時を刻んでいく強さを手にしました。
トゥルーENDでは現実から目をそらし続けていた自分を自分自身で否定するように吹雪の中、挫けそうになる心を叱咤し一歩一歩倒れるまで進み最終的に姉とずっと一緒にいる約束を達成しています。

「禁忌を犯す覚悟を持ってでも前へ進め」
これが本作が伝えたかったメッセージだと私は感じました。

[気になった点]
結局主人公と深雪は血縁関係があったのか無かったのかの部分が気になりました。
主人公の写真がある一定の年齢になるまで無い 蝉丸が主人公父に子供がいるのを知らなかった。 主人公は山人の血を継いでいる。
この辺の描写で実の姉弟なんだろうなぁとは思いますが、どうもネットの感想を見ると血が繋がって無いと解釈している人もいるみたいなんで少し疑問です。


総評
[総評]
安定して面白いシナリオに姉ゲーとして特化した部分があり十分良作と言える作品です。
古い絵柄でも問題ない人には是非やってみて欲しい一作です。

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