黄昏のエロゲ感想/a>

黄昏のエロゲ感想

エロゲ感想ブログ たまにオススメ書いたりする。

ぼくのたいせつなもの 感想(簡易版)


作品概要・評価点(ネタバレ無)

[作品概要]
本作品は、らくえん〜あいかわらずなぼく。の場合〜におまけ枠で付属している短編作品でロボットやアンドロイドモノによくある人とAIの違い 人権や倫理観についてをメインテーマとして書かれたシナリオになっています。
2〜3時間で読み終わる短いストーリーですが、非常にメッセージ性の強く読んでいて面白い作品でした。

らくえん付属verはボイス無しですが、月面基地前プレミアムBOXverやDL版はフルボイスとなっているので本作が気になった方はこちらの方を購入した方が良いかもしれません。


[評価点]
シナリオ:A
キャラ:A
ビジュアル:B+
世界観:B-
演出:B
音楽:C
オススメ度:A

総合点 77点



感想(ネタバレ有)

●メインテーマ
前提としてヒロインである冬木茉優子はケミカルと呼ばれるロボットであり本作の世界では生物学的にも法的にも「物」であって「人」では無いとされています。故に調教目的の痛めつけや、そのケミカルが作られた目的のための調節(人格の書き換え)などが許された存在です。
そんな世界観のなか冬木のケミカルとしての役割は病気の主人公のドナーとして死ぬことでした。例え人では無いとされていても見た目中身共に人にしか見えない存在の命をエゴだけで奪ってしまうのはおかしい!と主人公の考えから物語は展開されていきます。つまりケミカル(意思を持った“物”)の人権や倫理観についてが本作のメインテーマ言えるでしょう。


●ケミカルは人なのか?
この疑問は、「ぼくのたいせつなもの」という作品においてもっとも重要な部分であると思います。
私の考えを結論から言ってしまうと、ケミカルそのものは「物」であると考えてしまいました。 では冬木は物なのかと言うとそうではありません。ケミカルはあくまで器であり重要なのは心の有無であるためです。つまり冬木は物(ケミカルの体)に人の心が宿った存在だと言えます。
人も言ってしまえばたんぱく質の塊であるモノに心が宿った存在です。この考えだと人とケミカルの物と人の境界線は曖昧になってきてしまいます。実際作中の主人公も段々と身体の機能が無くなっていき反応もか細いものになっていくヒロインを見て何度も物と人どちらで接すれば良いか迷っていました。しかし冬木が人として過ごしていた時の明るい笑顔、その面影をいつまでも失わない すなわち心がまだあると考え最後まで「人」として接しぬきました。
考え方により物にも人にもなり得る存在
それがケミカルです。


●人のエゴ
エゴイズム 自尊心 利己主義 といった意味で使われる言葉ですが、本作のサブテーマといってもいいほど多くの場面で描写されていた部分です。
主人公の命を救うために間違った行動だと理解しながらケミカルを作った父の行動や冬木に嫉妬した野和、他者へ攻撃または関係を排除する事で自己を確立する秋津や主人公など挙げればキリがありません。
こんなエゴですが、ある意味では最も人間らしい考えであるとも言えます。
ここで冬木が最後に行った行動を振り返ってみると、彼女は自らの思考が完全にケミカル化するまえの願いである主人公のために犠牲になる思いを口にします。主人公が悲しむ事を理解し、自分自身を人間として扱うなら決して拒否できない思いを願ったのです。これは言ってしまえば自己満足だけの行動であり完全なエゴです。つまり、最も人間らしい考えであるエゴをケミカルである冬木が最後に主人公に押し付けたのです。これはほぼケミカル化していた状態でも最後まで人しての考えは失っていなかった、主人公が接してきたように彼女は「人」として生を全うしたのだと私は考えました。


●タイトルの意味
本作のタイトルは「ぼくのたいせつな“もの”」となっています。大切なものとは、勿論冬木の事ですが、なぜ最後まで人して接する事に決めた主人公が彼女をもの扱いしているのか?
これは、主人公にとって冬木そのものだけでは無く彼女のいた環境や考え 最後に残した思い全てをひっくるめて「もの」であるためだと考えました。つまりタイトルの言葉は、彼女をもの扱いしているのでは無く人である彼女を取り巻く全ての「もの」を大切なものとして扱って生きていく、決意の現れであると感じました。


●まとめ
本作は、元々がらくえんのおまけシナリオですし、似た設定であり知名度の高い生命のスペアという作品が存在している事もあってか、非常にマイナーなエロゲです。
しかし静かながらパワーのあるシナリオで読んでいて面白いので是非沢山の人にプレイしてもらいたいです。

Display mode : PCSP
コードをみる