黄昏のエロゲ感想/a>

黄昏のエロゲ感想

エロゲ感想ブログ たまにオススメ書いたりする。

夏の終わりのニルヴァーナ 感想

作品概要・評価点(ネタバレ無)

[作品概要]
生と死、輪廻転生を仏教の観点から描写した珍しい作品
ジャンルとしては成長物語系の泣きジャンルに属していますが、いく世代も前の出来事が現在に大きく関係している部分など若干の伝奇要素っぽさも楽しむことができます。
所謂メインヒロインゲーなので、クオンを気にいる事ができるかどうかがこの作品を楽しんでプレイできるかどうかの分かれ目になってくると思います。

[評価点]
シナリオ:A
キャラ:B+
ビジュアル:B
世界観:B
演出:A+
音楽:A+
オススメ度:A

総合点 84点



作品概要・評価点詳細(ネタバレ有)












[作品概要]


[評価点詳細]

・シナリオ:A
綿密に練られているという訳ではありませんが、ライターの書きたい事がよく伝わってくる良いシナリオでした。
詳しくは考察にて


・キャラ:B+
ややヒロインのキャラが弱いかなといった感じ… 特にナユはもっと恨みの感情を出して欲しかったです。
和尚に関しても良いキャラ付けがされているのに登場回数があまり無かったのはイマイチと行ったところ まぁクオンルートでかなり美味しい役をもらったわけですが…



・ビジュアル:B
少しクセが強い絵柄で人を選ぶかもしれません。 あと横顔が苦手なのか、CGではいくつか崩れている部分も見受けられました。 最終盤のトリを飾る ナユ レイア ミハヤが音楽室に集まる一枚絵では3人とも横顔なので良いシーンなのに絵が崩れていて少し残念


・世界観:B
彼岸という設定ですが基本的にはファンタジー要素無しの準田舎街という感じの世界観 特に真新しさを感じないので舞台設定としては少々平凡


・演出:A+
個人的に本作で一番評価できるポイント
凝っているというよりかは、演出のタイミングや場面が上手いタイプの作品です。 舞台設定が弱くとも世界観に没入する事が出来るのはこのおかげだと考えます。 クオンルートEDでクレジット終了後終わりかと思ったら花びらが舞って続く演出はかなり好き


・音楽:A+
半分以上がクラシックのアレンジverなのでBGMの良さはもちろんのことOPEDが素晴らしく、特にEDの2番と3番の感想からのサビの盛り上がりが非常にED映えする曲に仕上がっていました。


・オススメ度:A
癖のある絵柄さえ気にしなければ、短すぎず長すぎないプレイ時間でシナリオ BGM 演出とどれも高水準なので、かなりオススメのできる作品であると思います。


考察

[考察]

●業(カルマ)について
本作ではヒロインごとにカルマ、俗に言うトラウマがあります。まずはヒロイン毎のカルマとその根本をまとめてみました。


「レイアのカルマ」
レイアの業は信頼していた父親の不祥事とその後のマスコミやクラスメイト父親の側近達の豹変から人は醜いと思い込んでしまうというものです。レイアルートではこの思いが暴走した結果 全てを否定する結果となっていました。

この業は、祖父の浅ましい策略を知り その祖父自らによって殺されてしまった伊予の恨みが元になっていると考えられます。
本編ではレイア父が騙されたのか自分の意思で悪事に手を染めたのかは描写されていませんでしたが、業の根本である伊予の祖父が悪人であった為 シンプルに考えればレイア父も悪人であったのだろうなと推測できます。


「ミハヤのカルマ」
ミハヤの業は自分のせいで両親が死んでしまったことで、それ以降自分は呪われている 幸せになるべきでは無いと思い込んでしまうというものです。

これは仲の良かったものたちの死を助けることなく傍観し 凶事を運んだことにより自らを恥知らずと呪い自殺した美羽の意思が元になっているのだと考えます。
これはヒロイン5人の中では唯一加害者側としての業です。そのため本編では、恨まれる側としての表現が多かったように感じました。(大半がミハヤの思い込みによる部分が大きいが、ナユルートで生を無駄にしてナユの怒りを買う部分など実際にミハヤ側に非がある場面もありました。)


「ナユのカルマ」
ナユが生まれながらにして身体が弱く、生きる意味を見出す前に息絶え、このことから意味のないものを嫌悪するようになってしまいました。コレがナユの業ですが、ミハヤ レイアに比べ、恨みが多い より攻撃的な業であると感じました。他2人は自分で行動を起こす余地があったのに対してナユはそれすら出来ずに死んでしまった訳ですからね…
そうなるとナユルートでの業の暴走は自殺したい願いが叶って彼岸へと来たミハヤに対して願いが叶う事なく死んだナユの八つ当たりといった面もあったのかもしれません。

この業は村人に危険を知らせようと走るが、結局伝えることが出来ず生き絶える那津の意思が根本であり 結果としてナユは想いをはたせなかった自分自身を悔やみ 意味のない人生を憎むようになっていました。


「ノノのカルマ」
ノノの前世である寧々は忠誠を誓う伊予の命令を聞いてしまったばかりに、伊予自身を死に至らしめてしまいます。 結果主の命に逆らってでも伊予を守るべきだと後悔しカルマを抱えることとなります。しかし寧々は輪廻の輪の末 犬として生まれ盲導犬としての規則・命令を破って 自らの命と引き換えにレイア(伊予)を救うことに成功します。そのため他3人とは違い 本編開始時には既にノノのカルマは解消されていました。

主人公の力を借りずに、自力で業から抜け出したノノはホントえらい


「クオンのカルマ」
クオンのカルマは非常にシンプルなもので主人公を愛してしまったというものです。
これに関して私は他キャラと比べると極めて異質なカルマだと感じました。何故なら作中でレイアやミハヤ、ナユのカルマは悪としての描写が強く 解消されるべきものであるとされています。
一方でクオンは主人公を愛した事で結果として不幸になってはいますが、カルマ自体は否定されておらず、カルマからの解消もされる事なくエンディングを迎えてていました。
人を愛するカルマに縛られる事は、恋に落ちるという表現があるように被害を被る事もあるが守ってくれるもの(クオンの場合のカルマ)や不幸になってもそれを吹き飛ばす心の強さ(1200年間記憶を失った主人公を支え続けた意思)があるならば幸せを得る事が出来る 良いカルマであるのだと私は感じました。
これはライターが恋愛ゲームである以上は愛=悪とすることは良くないと考えたからであると思います。


●終章について
終章にて主人公はクオンを消滅させる事が出来ずに自分とクオン以外の縁を全て切る事で世界とクオン両方とも救う選択をしました。
この行動は主人公自身が業(カルマ)から解放されたい思いからとったものであると考えました。


「主人公のカルマ」
クオンと関係を持ってしまったが故にクオンを死なせてしまい、その後不死の特異点にしてしまった事が主人公のカルマです。
そして終章で主人公がクオンを救ったのは、自分自身がクオンを苦しめた罪から解放されたいという思いやクオンに対する罪滅ぼし 愛するクオンを失いたく無いといった思いが混在したこと(つまりは業からの解放)からした事から行った行動であると言えます。

この考えは所謂エゴの部分が大きく レイアの人を拒絶や ナユの八つ当たり ミハヤの自殺のエゴなんら変わりが無いものです。つまりは人間も神も結局は同じ不完全で汚い存在となります。作中では生あるものは人間だろうと神だろうと最終的には涅槃(ニルヴァーナ)へと導かれるます。
最後に涅槃に行くなら、それまでの人生は無意味なのか? エゴの塊を持ち汚い存在として生きて良いのか?
これはナユによって無駄な人生など無い事レイアによって前へと進むこと ミハヤによって死(消滅)は救いでは無い事が否定されています。
ナユ レイア ミハヤ 主人公と同じようにエゴだろうと汚かろうと正しいと思う意思を持って前へと進む事が重要であると、最後には涅槃に行くのだから自分に嘘をつく必要はない 正直に生きるべきだ 大事なのは結果ではなく道中だ
以上がライターが終章で伝えたかった事であると私は考えました。



総評
[総評]
カルマを通したキャラの過去やトラウマを表現したシナリオや仏教を元にした設定 人のあり方を示した描写など非常にクオリティの高い作品です。
またシナリオだけではなくBGMや演出なども素晴らしいため総合的に見れば名作に片足を突っ込んでいる良作と言えます。
個人的にはイマイチ知名度的にパッとしない部分があるのでもう少し有名になってほしい…

Display mode : PCSP
コードをみる