黄昏のエロゲ感想/a>

黄昏のエロゲ感想

エロゲ感想ブログ たまにオススメ書いたりする。

ATRI 感想

f:id:sedan0327:20200627220922j:plain

作品概要・評価点(ネタバレ無)

[作品概要]
フロントウィングと枕が組んで制作された本作品
有名メーカー2つだけあってBGM、グラフィック、システム面などなど ロープラながらフルプラに負けないレベルの完成度を誇っていました。
衰退した近未来の優しい世界観が特徴で非18禁であるため初心者向けであると言えます。


[評価点]
シナリオ:A-
キャラ:A
ビジュアル:S+
世界観:A
演出:B
音楽:B
オススメ度:A

総合点 85点



作品概要・評価点詳細(ネタバレ有)












[評価点詳細]
一部特記すべきと思った評価項目の詳細を書いています。


・シナリオ:A-
AIの自我をベースに人間としての生き方や過去と未来、感情の移り変わりなどのテーマで描かれたストーリー
シリアスなシーンはありますが基本的にネガティブな描写は極力少なめに抑えられており気軽にプレイしやすくなっていました。


・ビジュアル:S+
最も特筆すべきポイントかと思います。
キャラデザは可愛いよりですが塗りは美麗系で、この2つがうまくマッチしたデザインです。
立ち絵と一枚絵のクオリティの差も少なく非18禁なのが悔やまれます…(裸立ち絵とか見てみたかった)


・演出:B
このタイプの作品は過度な演出がお約束みたいな印象でしたが ATRIはそんな事なく水の描写(潜水時や雨など)以外はかなりシンプルな出来でした。
個人的にはアトリが感情を自覚するシーンなどで粋な演出が入ったら良かったかなーとか思ったり思わなかったり…



考察・気になった点

[考察]

●本作のテーマについて
ATRIでは、AIの感情と生きる時間の2つがメインテーマとして語られています。そこで、まずはこれらについて書いて行きたいと思います。


・AIの感情について
この手のジャンルでは最早欠かせないAIに自我はあるのか?といったテーマです。 作中では分かりやすい指標として喜怒哀楽を感じるか?自分で考えて行動する事ができるか?などがありました。

結論から言ってしまうとアトリには自我がありました。まぁここで結局感情の無いロボットでした!みたいな展開になったら大顰蹙でしょうしそりゃそうかといった感じですかね…
喜怒哀楽に関しては、以下のような描写から感じ取る事が出来ます。


喜→主人公との恋が成就した時

怒→主人公や主人公母が傷つけられた時の暴力事件

哀→マスターを失った時

楽→寿命が近づき学校での生活が楽しいと気づいた瞬間


また自分で考えて行動できるかに関しても本編のさまざまな部分での命令違反や意図的な嘘などの部分から分かります。


本編中盤にて主人公がアトリのログを見て全てが経験からの予測行動 プログラムされたものと知り 自我があるかどうかを疑う場面があります。
これに対し自我が無いのにある振りをするロボットの振りだと露見させる事により感情の芽生えを表現(時系列的には作品開始時から自我はあったが読み手への分かりやすい転換部分としての表現)したのは面白かったが、この振りの理由が本人すら感情を自覚せずロボットらしさ発揮するための行動だった点が少しうーんと思いました…
例えば主人公を守るために無意識的にに感情が無い振りをしてたなどの方が展開的には好きだったりします。



・時間について
もう1つのテーマは時間、ここで書く時間とは大きく分けて3つ 「過去」「今」「未来」に関してです。


過去:個を形成するもの、乗り越えるべき壁

今:過去の意味と未来の結果を決める場面

未来:希望、進むべき道


それぞれ、このようなメッセージが込められており作中では基本的に過去<未来<今の順番で素晴らしいものであると描かれていたように感じました。
確かに崩落事故の後遺症やAI暴走事件などの過去は忘れる、乗り越えるべき 「今」この瞬間がずっと続けばいいなどがその最たる例です。
とは言え決して過去を蔑ろにしているわけでは無く、過去があるからこそ生まれたアトリのログは主人公がアトリの感情に気づく所ややトゥルーでの電子世界などで重要なファクターとなっています。

要は、嫌な過去や辛い過去は忘れてもいいが、その他の「過去」は「今」の為に必要なものであり「未来」へ歩むきっかけである。このような事をライターは伝えたかったのだと考えます。




●アトリの願いと幸せとは?
アトリにとっての願いは幼き頃の夢である世界を救う努力する主人公と同じ時間を過ごすことなのだと感じました。
故にその夢を放棄したアトリとその周辺のみを救おうとした主人公を嫌いと称したのでしょう。 つまりアトリにとって主人公が自分と一緒にいる事より世界を救うことの方が重要である事が分かります。 世界=アトリを含むとするなら、より救う者が多い方を選ぶのは当然です。
しかしながら未来を歩むべき主人公にタイムリミットが迫っているアトリは同じように進むことは出来ません。
つまりアトリは主人公とともに歩み幸せを感じる「今」より、自分がいない「未来」を救ってほしいという願いを託したのです。アトリは幸福より主人公と自分の願いを優先度が高いと言えます。


しかしながら物語としてアトリが死に 主人公が未来に向かって歩むENDでは少し後味が悪いです。
そのため最後の1日である「今」を切り取り保存し、主人公が未来を救い終えてから電脳空間で気の済むまで二人で過ごす事でアトリの幸せである2人並んで未来への歩みを進める「今」を擬似的に再現したのでしょう。
このような手法をとりアトリ復活などの御都合主義に走らず幼き主人公の願いを叶え、アトリ目線で見てもハッピーエンドにしたのは流石であると思います。
副題のMy Dear Moment
直訳すると「私の親愛なる瞬間」的にも電脳空間で最後の1日を引き延ばし今この瞬間を永遠に過ごすのは理にかなってENDです。










[気になった点]
やはり非18禁なのと所々の展開が優しすぎるのが気になりました。
特に序盤アトリ→中盤の自我無しアトリの流れに対し、自我無しアトリ→自我自覚アトリへの転換が違和感を感じました。感情を自覚しつつも何処かぎこちなさが残るような喋り方を期待したのですが、即明るいアトリに戻ったのが優しいすぎるなぁ…と思ってしまいます。

非18禁に関してはまぁしょうがない事なので特に触れませんw


総評
[総評]
分かりやすくテーマが示されており理解しやすいシンプルなシナリオ
美麗なグラフィックに使いやすいUIと減点ポイントが少なく優等生的な本作品
中盤見せた不穏な雰囲気がアッサリと分散したのは残念ですが、その点も初心者向けでストレスフリーと考えればむしろ高評価ポイント
最後もテンプレに走らず変わり種で締めくくった所もおもしろいです。
総合的に見たらかなりの良作であると言えます。

Display mode : PCSP
コードをみる