黄昏のエロゲ感想/a>

黄昏のエロゲ感想

エロゲ感想ブログ たまにオススメ書いたりする。

クロスコンチェルト 感想


作品概要・評価点(ネタバレ無)

[作品概要]
ロスコンチェルトは、あっぷりけが初めてクラウドファンディングで制作した作品です。
世界観的にはコンチェルトノートと同一であり、御霊の設定なども受け継がれています。そのため必須ではありませんが物語を最大限に楽しむためにはコンチェルトノートと、そのFDである黄昏の先に登る明日のプレイが推奨されます。
内容としては恒例の伝奇ゲーで高い完成度で仕上げられていました。

[評価点]
シナリオ:B+
キャラ:A+
ビジュアル:A
世界観:B
演出:B+
音楽:A
オススメ度:B+

総合点 75点



評価点詳細・感想(ネタバレ有)













[評価点詳細]

・シナリオ:B+
綺麗にまとまってはいますが、歴代の作品に比べてパワー不足なのが否めません。割と序盤から霊的なものの存在を仄めかしていたので、シミュラクラのようにホラー要素を大目にしたシナリオにした方が良かったかもしれません。


・キャラ:A
メインである瑠璃は勿論の事その他含め魅力的なキャラが多かったです。
Hシーンの数も多く この部分に関しては、かなり評価できました。


・ビジュアル:A
一時期 迷走していたように感じていた、キャラデザも本作では持ち直していました。 シンセミアを正統進化させた本作の絵柄は、独特の魅力があり個人的にはかなり気に入っています。


・世界観:B
寮が物語の中心となっていますが、登場キャラも少なくコンチェルトノートの時に比べるとイマイチな印象を受けました。


・演出:B+
アッサリ目ですが良い演出です。
世界が色づく描写や最終盤に主人公が瑠璃を説得する場面などは物語を邪魔しないように盛り上げる要因となっていました。


・音楽:S
本作で一番気に入った部分です。BGMは勿論のことOPが素晴らしく 歌詞なしBGMのアレンジverも多く使用されていました。


・オススメ度:B+
面白くはありますが、同じメーカーの別作品の方が完成度が高いと言わざる得ないのでプレイする場合はそちらを優先した方が良いかもしれません…



[感想]
内容としては、いつものあっぷりけらしい伝奇モノでした。コンチェルトノートの外伝的な扱いなので、御霊の設定だけでは無くカレンダーの落書きや寮生活など前作をプレイした人にとっては楽しめる小ネタがありました。
また同じ曲を使った1stOP 2ndOPなどの演出や敬語妹、サブキャラ攻略可能などからシンセミアも少し意識して作ったように感じます。

シナリオに関しては、もうひと頑張りといったところでしょうか。
総プレイ時間は大体25〜28時間程度と平均的ですが、フラグメントやHシーン サブキャラも攻略可能な為どうしてもメイン4人のシナリオに厚みが足りなくなっています。また本作のメインである御霊の謎についてもコンチェルトノートで大部分を語られおり伝奇モノの魅力である謎やそれに伴う恐怖などが薄れてしまっています。結果として1キャラ攻略すれば、物語の全貌が大体分かってしまいます。
とは言え設定の練り込みや、伏線回収なども一通りされていますし、プロローグでの槍投げシーンやラピスラズリなど盛り上がる場面はあるので全くダメかと言えばそうでもなく良作一歩手前の出来と言えます。



考察・気になった点

[考察]
今回は伝奇部分を中心に考察していきたいと思います。


●荒御魂について
人の負の感情を操り、前へ進む為の方向性へと転化させる事で村を発展させる力を持つ御霊で「保存」の特性を持つ。

以上が本物語の核となる御霊の設定です。コンチェルトノートでは完全に悪とされていたモノをプラス方向で話に組み込んだ形になります。
この荒御魂に関しては本編よりも、むしろフラグメントでの過去編で語られてることが多いので、そちらをまとめてみます。


・朔日〜さくじつ〜
柊の葉に荒御魂を払う力がある理由が説明されているエピソードです。
この時代で生贄になった巫女が慕う姉の願いである「柊の葉が魔除けなら西条の魔も払って欲しい」といった願いと「保存」力が混じり合い 結果的に柊の葉が御霊に対して有効となりました。
自らが慕う姉が嘘つきにならないように毒無き柊の葉に毒を与え憧れの姉を最後まで憧れとして見るための少女の思いが具現化した形と言えるでしょう。


・上弦~あのひ~
御霊を通して未来を知る巫女の人生が語られるエピソード
ここでは、透子ルートの予言書が生まれたきっかけと開発地区がそのままの放置されている理由が判明します。
この時の巫女は、未来の世界を知ることで外への憧れの思いを抱いたまま生贄となっています。即ち、この時点で荒御魂の中心を保存して守り人々を外へと広げて発展させる性質が出来たと推測できます。


・宵待月~みらい~
兄との恋が実らず死んだ最後の生贄のエピソード
御霊の人格は過去の生贄から波長の合う魂が元になる設定があります。(本質的には同じであるタマと奇御霊の性格が違うのはこのせい)
本編にて度々登場した御霊の幽霊の人格は、宵待月~みらい~の少女が元となっている私は考えました。この考えは主人公が荒御魂に見初められた理由にも繋がるので以下にまとめます。


●主人公が荒御魂の生贄となった理由

主人公である悟は荒御魂の生贄に選ばれてしまいますが、これに対して本編ではいくつかの理由が推測されています。



説① 西ノ宮の血を継いだ能力者だから

悟こそが本来の見鬼であり、腕と母親の
命を犠牲に不完全な未来視を手にした瑠璃は紛い物のため生贄に選ばれずに悟が選ばれた説


説② 荒御魂の嫉妬

説①の見鬼であることに対する付属の説
生贄になり不自由な思いをしてきた自分たちと同じ境遇なのに幸せに生きている主人公に対し八つ当たり気味に取り憑いたというもの


説③ 同調する力を欲したため
主人公が荒御魂の力を借りずに負の感情を原動力としていたので、興味を持たれ見初められたという説です。
これに関しては、主人公の性格は西ノ宮の血を継いだ母から力を貰ったからであり、他の柊町の住民と同じく荒御魂の力を使っているので無いでしょう。
荒御魂がこの事に気づかなかった場合は別ですが…


以上が本編で語られていた説ですが私は、この3つとは別の主人公に対し羨望の念を抱いたからだと思いました。
私が幽霊の人格元であると考えた宵待月~みらい~の少女マチは兄、年の近い同性の従者2人共に成長し悲恋を経験した後に生贄として死んでいます。
つまりは瑠璃と環境が非常によく似ているのです。自分とよく似た境遇でありながらともすれば兄妹での恋を成就しかねない八重垣兄妹に興味を惹かれたのでしょう。
これだけだと説② 御霊の嫉妬と然程変わりませんが、大きく違うのは抱いた感情です。瑠璃に自分を重ね 悟に対してはかつて好きだった兄を重ねて疑似的な恋をした… つまり嫉妬や悪意といった負の感情では無く 好意 善の感情が素の行動だったのでは無いかと私は考えました。 荒御魂は負の感情を司るのでどうしても主人公達に対して行う事は悪意的な面が大きくなってしまっていた幽霊ですが、本質的には、ただの恋する女の子にすぎないと言えるかもしれません。
そもそも幽霊の声のトーンや言っている内容自体に悪意は感じないですし、一緒に居て欲しかっただけにしか感じませんしね。



[気になった点]
未回収の伏線も無かったですし、シナリオ的に気になった点は然程ありませんでした。
あえて言うとしたら、やはり伝奇部分の密度をもう少し上げて欲しかったなとは思います。あっぷりけ作品の特色の1つですし圧倒的にプレイ時間の少ないシミュラクラの方が伝奇パートが濃いのは如何なものかとは思います。



総評
[総評]
初のCF コンチェルトノートの続編 長い制作期間などの前情報があったので少し期待しすぎたかな…といった印象の本作品 他メーカーと比べたら十分な出来なので決して悪くは無いのですが、どうしてもシンセミアなどと比べると見劣りしてしまいます。
しかしながら瑠璃ルートラストのありがちなハッピーエンドである生まれ変わりを否定した演出は見事ですし、ラピスラズリの勢いは過去作にも負けないものでした。 総合的には十分なクオリティであると思います。

ぼくのたいせつなもの 感想(簡易版)


作品概要・評価点(ネタバレ無)

[作品概要]
本作品は、らくえん〜あいかわらずなぼく。の場合〜におまけ枠で付属している短編作品でロボットやアンドロイドモノによくある人とAIの違い 人権や倫理観についてをメインテーマとして書かれたシナリオになっています。
2〜3時間で読み終わる短いストーリーですが、非常にメッセージ性の強く読んでいて面白い作品でした。

らくえん付属verはボイス無しですが、月面基地前プレミアムBOXverやDL版はフルボイスとなっているので本作が気になった方はこちらの方を購入した方が良いかもしれません。


[評価点]
シナリオ:A
キャラ:A
ビジュアル:B+
世界観:B-
演出:B
音楽:C
オススメ度:A

総合点 77点



感想(ネタバレ有)

●メインテーマ
前提としてヒロインである冬木茉優子はケミカルと呼ばれるロボットであり本作の世界では生物学的にも法的にも「物」であって「人」では無いとされています。故に調教目的の痛めつけや、そのケミカルが作られた目的のための調節(人格の書き換え)などが許された存在です。
そんな世界観のなか冬木のケミカルとしての役割は病気の主人公のドナーとして死ぬことでした。例え人では無いとされていても見た目中身共に人にしか見えない存在の命をエゴだけで奪ってしまうのはおかしい!と主人公の考えから物語は展開されていきます。つまりケミカル(意思を持った“物”)の人権や倫理観についてが本作のメインテーマ言えるでしょう。


●ケミカルは人なのか?
この疑問は、「ぼくのたいせつなもの」という作品においてもっとも重要な部分であると思います。
私の考えを結論から言ってしまうと、ケミカルそのものは「物」であると考えてしまいました。 では冬木は物なのかと言うとそうではありません。ケミカルはあくまで器であり重要なのは心の有無であるためです。つまり冬木は物(ケミカルの体)に人の心が宿った存在だと言えます。
人も言ってしまえばたんぱく質の塊であるモノに心が宿った存在です。この考えだと人とケミカルの物と人の境界線は曖昧になってきてしまいます。実際作中の主人公も段々と身体の機能が無くなっていき反応もか細いものになっていくヒロインを見て何度も物と人どちらで接すれば良いか迷っていました。しかし冬木が人として過ごしていた時の明るい笑顔、その面影をいつまでも失わない すなわち心がまだあると考え最後まで「人」として接しぬきました。
考え方により物にも人にもなり得る存在
それがケミカルです。


●人のエゴ
エゴイズム 自尊心 利己主義 といった意味で使われる言葉ですが、本作のサブテーマといってもいいほど多くの場面で描写されていた部分です。
主人公の命を救うために間違った行動だと理解しながらケミカルを作った父の行動や冬木に嫉妬した野和、他者へ攻撃または関係を排除する事で自己を確立する秋津や主人公など挙げればキリがありません。
こんなエゴですが、ある意味では最も人間らしい考えであるとも言えます。
ここで冬木が最後に行った行動を振り返ってみると、彼女は自らの思考が完全にケミカル化するまえの願いである主人公のために犠牲になる思いを口にします。主人公が悲しむ事を理解し、自分自身を人間として扱うなら決して拒否できない思いを願ったのです。これは言ってしまえば自己満足だけの行動であり完全なエゴです。つまり、最も人間らしい考えであるエゴをケミカルである冬木が最後に主人公に押し付けたのです。これはほぼケミカル化していた状態でも最後まで人しての考えは失っていなかった、主人公が接してきたように彼女は「人」として生を全うしたのだと私は考えました。


●タイトルの意味
本作のタイトルは「ぼくのたいせつな“もの”」となっています。大切なものとは、勿論冬木の事ですが、なぜ最後まで人して接する事に決めた主人公が彼女をもの扱いしているのか?
これは、主人公にとって冬木そのものだけでは無く彼女のいた環境や考え 最後に残した思い全てをひっくるめて「もの」であるためだと考えました。つまりタイトルの言葉は、彼女をもの扱いしているのでは無く人である彼女を取り巻く全ての「もの」を大切なものとして扱って生きていく、決意の現れであると感じました。


●まとめ
本作は、元々がらくえんのおまけシナリオですし、似た設定であり知名度の高い生命のスペアという作品が存在している事もあってか、非常にマイナーなエロゲです。
しかし静かながらパワーのあるシナリオで読んでいて面白いので是非沢山の人にプレイしてもらいたいです。

消えた世界と月と少女 感想


作品概要・評価点(ネタバレ無)

[作品概要]
誰もが知っている「かぐや姫」という昔話を軸に謎を展開していくオーソドックスな伝奇モノです。
基本的にはホラー&ミステリーですが、異能バトル要素も取り入れており退屈にならないようなストーリーとなっていました。
伏線回収もしっかりしており全体的に完成度の高く良作と言える作品です。


[評価点]
シナリオ:A+
キャラ:A
ビジュアル:S
世界観:B
演出:B-
音楽:A
オススメ度:A

総合点 82点



評価点詳細(ネタバレ有)













[評価点詳細・感想]

・シナリオ:A+
よく練られていながらシンプルな内容のため理解がしやすいシナリオです。
ミステリー 伝奇 感動とどの部分においても疎かにしておらず十分なクオリティに仕上がっていました。
一方で個別ラストのマンネリや敵キャラの持て余しなどの改善点も多々あり


・キャラ:A
メイン サブ共に魅力的で特に表十二単の面々はデザインや設定が非常に素晴らしく、本作の要といっても良いかもしれません。


・ビジュアル:S
綺麗よりも可愛い寄りの絵柄なので明るめの塗りがよく映えたデザインになっています。
ホラー場面では、絵のタッチを変えてテキストに対して浮かないように配慮されており、その点も個人的に高評価ポイントです。


・世界観:B
少し規模を大きくしすぎかな?といった感じです。
竹取物語がモチーフなので月を舞台にするのは当然と言えば当然なのでしょうが、できれば基本は地球で物語を展開して欲しかった感はあります。
とは言え最期の謎に使われるトリックのオチがオチなので難しいかもしれませんが…


・演出:B-
ややマイナスポイント
心臓の鼓動や主人公が違和感を覚えるシーンなどで特徴的なSEを流す演出が多用されますが、どうにも本作の世界観にあってないような気がしました。
特に緊急地震速報のようなSEは最後まで慣れる事なく作品を終えてしまいました。


・音楽:A
作品の雰囲気に合わせた曲調が多く、「otherworldly atmosphere」などは盛り上がりで使用しやすく静かなシーン悪目立ちしない名BGMであると思いました。
挿入歌の中では星霜の轍が頭一つ抜きんでていて、発売後も話題になったらしいです。


・オススメ度:A
ややシリアスがキツイのと若干超展開寄りなのを除けば理解しやすい初心者向けのシナリオと言えるでしょう。
逆に言えば後付けや無理矢理な展開が無い分ある程度の数をプレイした人だとオチの予想がつきやすい作品かもしれません。

[感想]
昔からの伝承が実は宇宙人由来のものであり、登場キャラの大部分がその血を引いている。
このような元祖伝奇モノである痕をリスペクトした設定にしっかりと作り込まれたシナリオが秀逸の本作品。
共通の謎と失速感はあるが重要な謎の鍵を探す個別 トゥルーの答え合わせ、そして最序盤の選択肢の意味と感動のラストと構成が良く無駄な描写をなるべくしないように配慮されたストーリーでした。変に難解な表現や設定を使用しておらず、分かりやすいのも伝奇モノとしては良い部分であると私は思います。
ガチガチのシナリオゲーが評価されにくい中ギャグ要素を極端に排除した作品を出してくれたのは素直に喜ばしい事です。 欲を出すならば、魅力のあるキャラ設定を活かし個別の恋愛描写やイチャラブにも力を入れたキャラゲーとしても楽しみたかった感はあります。




考察・気になった点

[考察]

今回は各ルートごと描写が少なく考察が必要だと思った疑問点を中心に書いていきたいと思います。

〜共通ルート〜

●血文字の警告文を書いた人物
この出来事が起きた時に主人公一行が調べていたのは母である沖名明に関してであり、この情報を知られて困るのは十二単よりは月の使途側です。よって月の使途がおこなったと言えるでしょう。
では、月の使途の「誰」が行ったのか?
私は「美衣奈」か月の主側近の「姿を消す能力者」この2人のどちらかであると推測しました。美衣奈だった場合は月の使途メンバーだったので、ある程度は明の死に月の使途が関係している事を知っていて主人公たちを守るために行った行動 一方 側近の場合は文字通り警告であり知られると不味い情報だと判断したのだと思います。
主人公は警告文発見の際 姿は見えずとも視線のようなものを感じています。トゥルーにて側近の能力は姿のみで気配までは消せないと判明しています。そのため状況的に判断するのならば可能性としては、3割で美衣奈 7割 側近といったところだと私は予測しました。


〜つばめルート〜

●椿 失踪の理由
椿に関しては、クローン技術発展のための実験台にすぎないのだと思います。
瑠衣ルートで判明する過去の神隠し=月で散吉郷住民のクローンを作り終えたら地球に戻しているという事なのでしょう。 つばめは幼少期に神隠しに会いクローンである椿が誕生したのちに地球に戻されたと考えられます。椿が失踪して会えなくなったのは、月に連れ戻されたから筋が通ります。
実験施設から逃げ出した椿がつばめ母に保護された部分 もちろん施設が月にあるわけですから、つばめ母も月にいることになり、つばめ母は月の民である可能性もあります。
もっともこのルートに関しては特に大筋との関連性は薄いと思いますが…


〜杏子ルート〜

●白八と杏子の関係
このルートでは白八の存在がよくわからないポイントです。杏子の兄である彼ですが、いつ兄となったのでしょうか?
幼少期武留を助けたのは間違いなく十二単と名乗る白八であり、この時点では地球にいた事になります。月の民である十二単がなぜ地球にいたのか?彼の正体は何なのか?

この謎は杏子と白八の関係から、ある程度まで推測する事ができます。
羅刹に偽物の妹と言われた場面から、この時点の杏子と白八の関係は単純に血が繋がってないorクローン体に過ぎないこの2つの解釈ができます。

クローン体の場合はオリジナルの杏子とは血が繋がった地球人で十二単にスカウトされ基本的には地球で活動を行なっていた。武留を助けたのも地球での活動中の出来事といった解釈
血が繋がってない場合は、杏子とは何の関係性もない月の民であり武留や杏子の記憶は月に連れてこられた時に植えつけられた作りもの記憶と考える事となります。


〜瑠衣ルート〜
タイムリープのトリックに関する伏線や瑠衣なりの異能力およびかぐや姫の解釈が語られるルート 基本的には曖昧な部分は無いが、アキラナオキの描写で一部考察の必要な点があります。

●アキラナオキの処刑について
アキラナオキの正体はトゥルールートで主人公の母である沖名明である事や彼女がかぐや姫殺しの罪を被り処刑された事などが判明します。そして この処刑方法が瑠衣ルートで語られていますが、その内容は「器の儀」によく似た方法がとられています。
これは、かぐや姫が死んだ直後でセレネを閉じ込める贄を早急に用意する必要があった故に処刑ついでに明の死体を有効利用したのだと推測できます。
ここで疑問点として上がるのがアキラナオキの死が地球に伝わっている理由です。 彼女は月の民である事は明白であり五伴緒や十二単が月にいる事から処刑も月で行われたと考えるのが自然です。では何故地球で新聞記事が書かれ器の儀で使ったであろう死体も地球の警察が処理したのか?
この事件を知った後に瑠衣がプレミアのついたアキラナオキの本を手に入れた描写があるため、月に作られた散吉郷にのみに用意された情報では無いと分かります。なぜならば
アキラナオキ怪死事件発覚→本プレミア化→瑠衣が本を確保\ここまでは地球の出来事\→瑠衣が主人公に事件を伝える
このような流れになるからです。
器の儀で用意された贄に関しては情報がありませんが、素直に考えればセレネを封じ込めた死体を処分してしまうのは、不味いはずですが地球の警察が発見した以上処理されたと考えるのが一般的でしょう。
こうなってくると益々 五伴緒がわざわざアキラナオキの死体を地球に放置ないし運んだのが謎になってきます。残念ながら、この疑問に関して私は納得のいく答えを見つける事ができませんでした。


〜美衣奈ルート〜
他3つに比べて圧倒的に情報量の多いルートですが、それ故に力も入っているのか矛盾点などはありませんでした。
しかしひとつだけ気になった用語があったので考察していきたいと思います。

●ロストナンバーについて
月の使途アジトにて主人公に対して使われたロストナンバーという言葉
これは文字通り手の甲にあるナンバーが無い被験体の事を指しているのだと言えます。
美衣奈ルートでは主人公がロストナンバーだと発覚した際即処理せよといった命令が下るのですが、この理由は2つほど考えられます。

・説①
番号が無い=最後の生き残りである主人公の可能性ありとなりアキラナオキ蘇生のために器の儀を行う月の使途は輝久夜を成長させる必要が無い。
そのため、とっとと殺し腕だけ持っていこうとした説

・説②
共通ルートの時に生活していた村人の生き残りと判断し、その場合表向きループのカラクリに気づいている可能性アリと思われた。
この時アジト内には浮老がおり表向き十二単と協力関係にある月の使途は輝久夜成長の失敗となり得る存在に対し対処しなければならなかった説

どちらの説でも話の流れ的に違和感なく展開する事が出来ると言えます。


〜輝久夜ルート〜

語り部について
瑠衣及び主人公月の王ENDにて語り部さんが登場します。
輝久夜タイムリープENDで分かる事ですが語り部=元祖かぐや姫であり、輝久夜が身代わりとなっていない世界線では既に死んでしまった身です。では何故存在し得ない彼女が登場したのか?
ここからは完全に妄想となるのですが、歴史改変前にいた語り部はエピローグにて輝久夜を復活させたのちに、IFの世界である主人公月の王ENDの世界選に能力を使い移動をした歴史改変後の語り部だと考えると面白いかもしれません。

語り部(元祖かぐや姫の能力)
タイムリープと穢れの浄化が、かぐや姫の能力なのに世界線移動(タイムリープでは無い)が出来るのか?という点ですが 私は可能だと考えました。
そもそも元祖かぐや姫の力に確定した情報は無いため描写のみで判断するならば、その力とは「能力使用者が思う他者を幸せにする願いを叶える能力」となります。 ここで重要なのが「能力使用者が思う他者の幸せ」という部分です。つまりセレネ誕生の原因のように結果として他者の不幸となる願いにも力は発揮されるという事です。
よって月の王ENDの出来事を語り継ぐ事が主人公及び輝久夜にとって幸せだと判断したから、語り部は能力を使い世界線移動を成功させたと私は考えました。


〜全ルート〜

●ライターが伝えたかった事
穢れ(悪)を穢れ(悪)と認めなければ、それに対する対策を講じる事もできなくなってしまう。穢れ(悪)を認める事でその行動は初めて浄化(正義)となり得る。つまりは穢れ=浄化となる。
これは作中で述べられていた事を要約した言葉です。
もし上でおこなった語り部の能力の考察があっているならば、他者の幸せを願う輝久夜と自己の防衛を願う主人公のは穢れと浄化のように相反する存在であるとなります。相反していながらお互い惹かれあった輝久夜と主人公達により穢れ=浄化を表現したのだと考えられます。


この穢れを認めてることで正義となりうる事は作品の世界だけではなく現実世界へのメッセージでもあると思います。作中では災害といった表現がよく使われていたように感じました。セレネや共通で主人公が起こした土砂崩れなどが筆頭です。
環境破壊を繰り返す人間に対し、いつかセレネのように災害のしっぺ返しがくる
それに対抗するには、環境破壊=悪だと認める事から始めるべきだ。本作全体を通して このようなライターの警告が聞こえてくるようなシナリオであったと私は感じました。



[気になった点]
やはりシステム面に関しては少々気になりました。必要最低限の設定項目しかなく2018年に発売された作品としては、かなり低レベルなものだと言えます。
この部分を改善し十二単のストーリーを追加した完全版が出る可能性があるらしいので、それを待つのが正解なんですかね…?
個人的にはシステム改善パッチとかを配布すべきなのかなぁ…?とか思ったり思わなかったりしました。

後はカルマに関しても残念だった言えます。かぐや姫と主人公 輝久夜を繋ぐ重要なポイントの1つにこの「カルマ」があるのですが、描写があまりにも少なすぎてなんとやらといったところ…
公式サイトに載っている情報の方が本編で提示された情報よりも、詳しく書かれているってどういう事なんですかね?



総評・余談
[総評]
一部酷評もしましたが、全体的なクオリティが良く総合点も高いです。
どちらかと言えば超展開やセカイ系苦手な自分でもかなり楽しむ事が出来たので、セカイ系が好きな方ならば、気にいる事間違いなしだと思います。
上で書いた完全版の噂が本当ならば是非予約して発売日当日に楽しみたいと思えるレベルでした。
初心者向けにはちょっとクセが強いかもしれませんが、伝奇モノの入門編として非常に勧めやすい、そんな作品でした!




[余談]

完全に余談となりますが、個人的にタイトルの真ん中にあるウサギが凄く秀逸だと感じました。
本作のメインとも言える月とそれに関係したウサギ そして平仮名の「と」をモチーフにしたデザインですが「ウサギ=兎=と」 このように「と」をデザインに入れなくてもシッカリと「と」と読めるようにされているのは良いなぁと思いますね〜

ナルキッソス ゼロ 感想(簡易版)

作品概要・評価点(ネタバレ無)

[作品概要]
ナルキッソスシリーズ5作目
3作目のナルキ3は番外編のため実質SIDEセカンドの続編となっています。
ナルキッソスという物語が始まるキッカケのエピソードが書かれており、どこか後ろ向きだった前作までとは違い 明るい雰囲気で進んでいきます。
1、2をプレイした方に是非やってほしいと思えるような作品でした。


[評価点]
シナリオ:A+
キャラ:A
ビジュアル:B-
世界観:B+
演出:B+
音楽:S+
オススメ度:B

総合点 85点



感想(ネタバレ有)

●本作のテーマ
本作のメインとなる軸は「始まり」であると私は感じました。
これはストーリー的にも7Fや伝わるルールなどの誕生を描いた内容でしたし、ヒロインと主人公の出会い(始まり)から別れまでを前作以上にしっかりと描写していたところからも伝わってきました。
そもそもタイトルがもう始まっている1では無く始まる前の0となっている事からして、「始まり」がテーマなのは、ほぼ間違いないと思います。


●死とは終わりなのか?
本作のメインヒロインである陽子も歴代ヒロイン達と同じように最終的には去る者としての宿命を全うして物語は終わります。主人公とヒロインの出会いが始まりならば死に別れは終わりなのか?

作中での、この考えはヒロインの行動によって否定されています。陽子は残したモノが継続されている間は自分は生きている終わっていないといった意思を持ったまま陽子は息を引き取りました。
そして陽子の残した7Fのルールはエピローグにてナルキ初代主人公によって消えることなく伝えられています。
つまり、残したルールが続いている以上陽子の意思は死んでおらず死=終わりでは無いというメッセージ性の込められたシナリオであるとと同時に
(陽子→姫子→セツミ→初代主人公→千尋とルールは伝え繋がっていく)
この部分から本作は「始まり」がテーマでは、ありますが それと同時にナルキ1+2と同様に「受け継ぎ」がテーマであると言えます。


●去る者と残されるもの
SIDEセカンドで綴られていた、このテーマは本作でもストーリーに食い込んでいました。

病気が発覚して主人公の前から姿を消した陽子 これは、妹を遠ざけていた姫子と同様の思いからくる行動であると言えます。ヒロシは当初思いを汲み取り、別れを容認していました。しかし最終的に主人公は陽子を探し物めてしまいます。この事から、もしもコレが失踪ではなく死に別れで陽子に拒絶されたまま一生の別れになっていた場合 主人公は死んだ陽子の影を追い求めてしまうことになると予想できます。


去る者が残されるものを思って関係性を断つのは、あまり良い行動とは言えない

「残されるものを本当に思っての事なら最後まで一緒にいるべき」
上記の事からSIDEセカンドで書かれたこの思いがナルキゼロでも表現されている事が分かります。
これも一種の継続 受け継ぎと言えるかもしれません。


●陽子最期の言葉
陽子が死ぬ直前に伝えたルールは一体何だったのか?
明確な答えは無いのでヒロシがセツミに言った、「君はもう知っているはず」といった発言から考えるしかありません。

私は、「死ぬ時には笑う」これなのかな?と思いました。
時代を経た変化していくうちに無くなってしまった初代の「死ぬときは笑う」というルール コレを初代ナルキのヒロインが復活させたと考えると綺麗にまとまります。
ヒロシの君はもう知っている発言も、水着を着てグラビアアイドルのように笑いたいというセツミの願いを感じとっての発言だと考えられます。


●まとめ
ヒロインとの出会い 発展 別れ
この定番の流れを崩さずに前作までの共通テーマと本作のメインテーマを表現したシナリオは非常に出来の良いストーリーであると思います。
文字通り始まりであり総括でもある物語なので、ナルキシリーズをプレイするつもりのある方には絶対にやってほしい作品です。

ナルキッソス 1+2感想

作品概要・評価点(ネタバレ無)

[作品概要]
ステージナナの出したフリゲー
非常に有名&人気で続編製作やコンシューマ化もされています。
ジャンルとしては泣きゲーに属していて余命宣告 病人系のシンプルな設定とライターである片岡ともさんの死生観が魅力の作品です。

[評価点]
シナリオ:A
キャラ:B+
ビジュアル:B+
世界観:A
演出:B+
音楽:S+
オススメ度:S

総合点 83点



評価点詳細(ネタバレ有)













[評価点詳細]

・シナリオ:A
地の文が多く心理描写にメインを置いたテキストでした。
今回はナルキッソスとその続編にあたるナルキッソス2をプレイしましたが、2作ともテーマにしている部分が違っているので飽きることなくプレイすることができました。


・キャラ:B+
登場人物が多い割にインパクトが弱いキャラが多い気がしました。
作風的にあまり目立ったキャラにしない方がいいのは理解できますが、1の男主人公はもう少しキャラ付けしても良かったのでは…?とか思ったり。



・ビジュアル:B+
基本的に立ち絵なしの背景のみで進みますが、重要な場面でのCGはかなり出来がよかったです。
とはいえ数が少ないので、もう少し多くても良かったかもしれません。


・世界観:A
遣る瀬無さと優しが入り混じったような世界観
1は遣る瀬無さ成分が多いのに対し、2は優しさ成分が多かったように感じました…
片岡ともさんがライターですが、あまりねこねこっぽさは無く、新鮮な気持ちで進めることができました。




・演出:B+
凝ってはいませんが、味のある演出
黒一色のテキストボックスや立ち絵が無く背景だけで進む部分など余分なものをこそげ落として物語に感情移入しやすくなっていました。
個人的にお気に入りの演出は最初のCGが出てくるシーンです。「彼女が初めてまっすぐこちらを向いた」のテキストと同時に主人公と同じくプレイヤー目線でも初めてセツミのCGを見ることになるので序盤で感情移入するための掴みとしては最適の演出であったと思います。


・音楽:S+
本作で一番目立っていた部分です。
OP ED 挿入歌で合計4曲あり、BGMもかなり力の入っていました。
ボイスありver なしver選べるのもBGMのみで世界観を楽しむ事を意識した上での設定なのでしょう。


・オススメ度:S
フリーゲームで短く
設定的には重いですが、描写・展開的には比較的爽やかな気持ちでプレイすることができるので、ノベルゲー初心者の方にも、かなりオススメできる作品です。


感想

[感想]

ナルキッソス1

ナルキッソス1は2に比べて死生観成分が弱めにされていたように思います。
というよりもプレイしていて私的に死を死では無く1つの意思表明として表現されていたと感じました。
なぜ意思表明なのか?それはセツミの死が無意識に起こる死 避けようのない死ではなく、「自殺」という文字通り自ら選び取った死であるためです。
余命宣告を受け世界から拒絶され、拒絶された事を認めたくないがため期待する事をやめたセツミ。この考えは願いや夢があったとしても期待しない事挑戦しない事で、もしもあの時ああしていれば叶っていたかもしれないといった言い訳を自分自身にするためのものです。
100%叶う事のない夢だとしても、実際に試さなければ叶わないと確定することは無い、もしかしたら病気が治って水着姿でモデル雑誌のような笑顔でいる自分もいたかもしれない それぐらいしかセツミにできる幸せを感じる方法は無かったのでしょう。

しかし最終的にセツミはこの考えを捨ててしまいました。理想とはかけ離れていても笑顔で水着をきて撮影会をし、最後には自分の意思で自殺をしました。
期待しない行動しない挑戦しない
IFの自分を想像して準備をし続けるだけだったセツミが行った最初で最後の抗い
これこそ自意識であり最初に書いた「死=決意表明だと考えた理由です。
この作品のテーマは死生観ではなく自意識 以上がナルキッソス1を通してライターが伝えたかった事だと思いました。



ナルキッソス2

ナルキッソス2は1に比べて明らかに死生観について大きく触れておりハッキリとした泣きゲーとして作られていました。
それ故に前作に比べると演出過多というか、どこかクドい印象を受けてしまう方もいるかもしれません。
しかし個人的にメッセージ性といった意味合いではこちらの方が描写が多く
より顕著に感じる事ができました。

本作のテーマは死生観
特に「去る者と残されるもの」に重点を置いたシナリオとなっています。

2の主人公である姫子は、元ヘルパーの7F余命宣告者という設定です。
ヘルパー時代に友達となった女の子との死に別れた経験から去る者は残されたものを悲しませてはいけないといった考えを持つようになりました。この考えから妹を遠ざけたり、ルールに友達を作るなを追加したりしていました。
そんな彼女が前作主人公と仲良くする事を選んだのは、同じく病気持ちであり去る側にも残される側にもなり得る中途半端な存在 例外的な存在といった考えからだと私は考えました。
作中では明記されていませんでしたが、おそらく姫子にとってセツミはパトラッシュに近いポジションだったと思います。


・神様への文句を辞めた理由

終盤にて姫子は最後の願いである女の子を殺した神様への文句を結局辞めています。この理由はシンプルです。
もしも神を否定するならば、女の子が最後に神に願った残される人に笑ってほしいといった思いをも否定する事になるからです。
ブロッコリー嫌いやパイナップルの木など姫子は女の子が死んだ影響を色濃く受け継いでいます。そんな彼女が女の子の子を否定する事など出来るはずもなく最終的に友達を作るなのルールも撤廃しています。
この際ロザリオをセツミに渡していないため自殺=神への謀反=女の子の思いを踏みにじる事になるため恐らく自殺もしてないと思われます。



●まとめ
ナルキッソス 1+2 全体としての軸は思いの「受け継ぎ」だと言えます。
ナルキ2で姫子は女の子の思いを「受け継ぎ」そんな姫子の思いをナルキ1でのセツミが「受け継いで」笑って死んでいきました。
エピローグではナルキ1の主人公が、そんな彼女の死に際に感嘆し、7Fのルールに笑って死ぬ事を付け足しています。
そして姫子の妹である千尋がそのルールを主人公から「受け継ぎ」次へと伝える決意をして物語は締めくくられています。セツミは思いを手に入れた事で「受け継ぎ」を可能にしましたし、姫子は友達を作る事で「受け継ぎ」を可能にしました。

この2人は最後には幸せを感じて死んでいます。よって去る人は、なにかを残される側に渡すべきであり 残された側はその渡されたものに意味を見出すべき。
この行動こそ両者ともにしあわ幸せになるための方法だ…
本作が最終的に言いたかったのは、このような事であると私は感じました。










総評
[総評]
安定したシナリオに抜群の雰囲気
人気が出たのも納得です。
プレイ時間が短く 空いた時間にサラッとプレイでき、感動できる。
そのようなゲームを求めている人に是非プレイしてもらいたい作品です。

AQUAS 感想

作品概要・評価点(ネタバレ無)

[作品概要]
人類が滅びた後の世界
地球を支配していたのは水中で呼吸を可能にした人魚たちだった!
この一風変わった特徴的な設定の本作品
ネットでの評判はパッとせず知名度も無いので知っている人は少ないかもしれませんが、独特の設定はハマる人にとっては、とことんハマるストーリーとなっています。

[評価点]
シナリオ:A
キャラ:B+
ビジュアル:A-
世界観:S-
演出:C-
音楽:B-
オススメ度:A

総合点 79点



評価点詳細(ネタバレ有)













[評価点詳細]

・シナリオ:A
SF 哲学 ファンタジーを混ぜ合わせたようなシナリオ
終盤 一部の展開について説明不足な点はありましたが、とにかく退屈せずにプレイする事が出来ました。純粋にプレイしてて面白いタイプのストーリーです。


・キャラ:B+
全体的にキツイ性格のキャラが多いように感じました。
ツンデレ系統のヒロインは自分的に割とアリなのですが、この部分が難点になる人もいるかもしれません…


・ビジュアル:A-
流石に今見ると古臭い絵ですが、意外にも完成度が高いです。
2000年初期に多い判子絵では無いですし、コメディシーンのCGではキャラの表情が多彩なので見ていて楽しいです。


・世界観:S-
本作一番の魅力ポイント
一見のどかに見えてどことなく退廃したような田舎町 人魚 神 幽霊と…
近年のありふれた学園ものには無い良さがフンダンに使われています。


・演出:C-
イマイチな部分…
終盤に強制オート機能になる演出があるのですが、この終盤部分で割と重要な描写を入れてあるため読み込んで理解しようとしても直ぐに次のテキストに行ってしまいます。
正直 無駄な演出だと思いました。


・音楽:B-
いかんせん数が少なく 何度も同じBGMを聞く羽目になってしまいます。
せっかくBGM自体は良い出来なので、種類を増やして欲しかった感が否めません…


・オススメ度:A
変わった設定ではありますが、ある程度までは理解しやすいですし、絵柄も時代を考慮すれば十分綺麗と言えます。
環境面が難点ですが、win10 ならば有志パッチを適用すれば問題はありません。
ネット評判に左右されずにプレイする事をオススメします。

感想・考察・気になった点

[感想]
個人的に物凄くツボに刺さった作品でした。
作品全体を通してはSFと若干のファンタジー 個別ルートは雪花が鬱、九月がバトルファンジー、小鮎& 美由菜は感動路線とそれぞれテーマがバラけていて読み手を飽きさせることが無い構成になっていました。特に面白かったのは、トゥルーと小鮎ルートです。
それぞれのエンドでバラまいてきた伏線を回収して一気にどんでん返しを決めたトゥルールート
強気なキャラが実は過去に…的な設定で安易なお涙頂戴に持って行かず鬱々としたされど最後はスッキリとできる感動路線の小鮎ルート
どちらも王道とはズレていましたし、トゥルーの方は描写不足な部分もありますが、十分良作と言っても良いシナリオであったと思います。
しかしこれらのサブキャラシナリオのパンチが効きすぎておりトゥルーへと繋がる 序盤のメインルートとされる雪花ルートのパワー不足が目立ちます。
ラスト間際 ロリ化した雪花と主人公をすれ違わせたのは良かったのですが、その後の流れが安直すぎたので、この部分をもう少し捻ったら良かった感はありました…


[考察]
本作は一部描写が足りないポイントもあるので考察は難しいのですが、自分なりの解釈を書いていきたいと思います。


●人類滅亡の理由

本作開始時より大昔 ヒトがまだ生きていた時代に人類はネオ物理学と言った学問を発見します。これについては特に詳しい説明はありませんでしたが、この学問を利用しているっぽい描写のあった美由菜が魔女扱いされているので実際魔法のようになんでもできるようになる技術なのだと推測されます。
ヒトはこれを利用し水中で呼吸できる人魚を作り上げたのですが、ある一定の歳まで成長すると若返りを起こす副作用が発見されました。雪花のような赤羽の民はこの副作用が色濃く出るような遺伝子を持った一族なのでしょう
その後ネオ物理学を研究する施設で事故が発生し地上が汚染され人類は滅びてしまいました。この際に海に逃げた人魚たちが反映し栄えた世界が作中の時間軸です。


●美由菜について

人類滅亡時の生き残り
彼女のルート終盤にて半分人魚半分人類だと口を滑らせていたので、赤羽の民の若返り副作用と人間の老化が互いに作用しあい老化しないのだと推測されます。
人類復活のために主人公のクローン(厳密にはクローンでは無いが)を何度も作ってきていますが、この人類復活とは遺伝子情報としてのヒトでは無く生き方考え方を含めたうえでのヒトなのでしょう。作中の「エイジ」が今まで誕生したどのエイジよりも特別扱いされていたのは「エイジ」が、より人間らしいエゴを持っていたからだと考えられます。


●OZについて

主人公と冬花を時の止まった世界に閉じ込めたり、アヤメを別世界から連れてきたり、小鮎の過去を言い当てたりと…個別ルートにて起こる事件の原因を作る謎の男
おそらくは美由菜と同じく滅亡時代の生き残りだと思われます。
上記のように異世界に行ったり過去に行ったりする力を持っていますが、コレはネオ物理学の力を使っているのでしょう。正体を明かした際 美由菜が「男運が無い」とボヤいているため、深い関係の間柄だったのかな?とか思ったり…

このカミングアウトの際OZは美由菜に対し「彼と私の関係性に気づかなかったのか?」と発言しています。彼=主人公だとするなら、エイジはOZと親子関係 美由菜とOZは恋人関係でエイジは2人の子供 これならば、美由菜が人類復活=エイジ復活としている理由も理解できます。実際に美由菜は自分自身をエイジの親代わりと自称しているわけですし十分ありえる展開ではあると思われます。まぁコレに関しては完全に妄想の域を出ませんが...

仮にこの考えがあっているとするならば、トゥルーでのOZと主人公の哲学じみた問答は、自らの息子が人類たり得るかを問うテストだったのでは無いかと考えられます。以下がOZの問いと主人公の答えです。



Q:「本当の自分は大切か?」

A:「本当の自分に嘘をつくのは良く無いことであり、仮に嘘をついた方が幸せだとしても それを壊すべき。」


Q:「力とは何か?」

A:「力とは人と戦わないために必要な力
所謂 抑止力他者を守るために必要なものであり、勝負に勝つこととは別にある。たとえ進化する道を捨てることになっても力は捨てるべき。」


Q:「何故雪花を選ぶのか?」

A「小鮎や九月と違い雪花は俺と関係を持ち過ぎてお互いがいないと生きていけない。例え2週間しか一緒にいなかったとしても幸せにしてやりたいと思った。」


この3つの回答は自分の考えを通すために「幸せを・進化を・小鮎と九月を」を犠牲にする事を許容しています。
このエゴこそヒトはヒトたり得るか条件
人魚には存在しないモノなのだというのがライターの考えなのでしょう。
実際にOZは作中で口には出していないもののエゴの存在を確認して主人公を(息子を)ヒトと認めたのだと思います。


●主人公が他ENDの知識を有していた訳

これに関しては異世界に渡る力(主人公が他ヒロインを選んだ世界)を持つOZの力が作用したのでは無いかと言えます。

この件に関しては主人公が過去のエイジ達の記憶があるのは説明されましたが、IFの世界 自分が選ばなかったルートの知識を持っている説明はされなかったので、完全に推測するしか無いですね。この部分が終盤のわかりにくい説明不足ポイントの1つです。
まぁOZが他の未来を見てみる発言をしていたので、この考えであってるとは思いますが…


●アレクについて

正体は不明です。
異世界渡航を可能にする半ば神のような存在であるOZがアレクに対してビビり散らしていたので、本物の神かも…?程度の情報しかありません。

物語を傍観者の立場として見ており、偶に主人公にアドバイスをして助け 作中世界にてほぼ絶対的な力を持っているOZですら手出しできない存在
メタ的な考えならば、主人公に対するアドバイスを選択肢を選ぶプレイヤー(画面の前の自分)の代理者と解釈出来ないことも無いです。



[気になった点]
やはり一番気になったのは、アレクとOZの正体 そして冬花ルートで主人公が小鮎&九月ルートでの出来事を知り得た理由ですかね。一応の説明や解釈は考察でしましたが、なにぶん情報不足で妄想の域を出ないのが殆どなので、他の方の考えも見てみたいです。
もっとも結構マイナー作なのでネットでの感想も中々なく合ってみ簡単なものばかりなので上手くはいきませんが…



総評
[総評]
とにかく退屈知らずの作品なので、飽きっぽい方やのんびり系の作品が合わないかたにもピッタリです。
難点である終盤の描写不足もある意味では考察が捗ると言えるかもしれません()
個人的には最近プレイした中でもかなり面白くオススメできる作品でした。
まぁまぁなマイナー作なのでプレイする方は少ないかもですが、ぜひやって見てほしいです。

雪影 感想

作品概要・評価点(ネタバレ無)

[作品概要]
姉+伝奇ゲー
基本的に攻略ヒロインはメインである深雪だけで5つあるENDのうち4つが彼女のルートとなっています。
そのため本作を楽しむためには深雪に魅力を感じるかどうかが重要になってくるので姉キャラが根本的に苦手な人はやめた方がいいかもしれません。
とはいえ民俗学部分の作り込みはかなりしっかりとされているので伝奇パート目的に絞ってプレイするのも一興ではあると思います。


[評価点]
シナリオ:A+
キャラ:A
ビジュアル:B-
世界観:B-
演出:B
音楽:B+
オススメ度:B+

総合点 79点



評価点詳細(ネタバレ有)












[評価点詳細]

・シナリオ:A+
ファンタジーに見せかけた前半とそれを覆す後半 現実路線の民俗学部分
主人公が謎を解明する気が皆無なのでワクワク感は抑えめですが、じわじわと面白さが伝わってくるストーリーでした。


・キャラ:A
姉ゲーですが、自分はサブキャラの紫子が非常に刺さりました。好きになったというだけで、ここまで主人公に尽くすヒロインも珍しい気がします。
逆に深雪さんは、テンプレ姉感がしてどうにもといった感じ…


・ビジュアル:B-
塗りは綺麗ですが、どうにも安定感がなく同一人物に見えないCGもチラホラと見られました。
立ち絵の種類が多いのは高評価ポイント


・世界観:B-
閉ざされた田舎故の閉鎖空間的な怖さが描かれたシナリオながら、どうにも伝わってきづらい世界観でした。 良く言えば安定感のある 悪く言えばイマイチ パッとしない舞台です。
霜神伝説が掟などとして根付いている時代錯誤な村などの設定にした方が個人的には良いと感じました。


・演出:C
特にこれといった演出は無かったです。


・音楽:B+
雪国らしく静かなBGMが多いため印象には残りづらいですが、良い曲が多かったです。
EDで流れる和楽器風の曲は作品の雰囲気ともあっていてお気に入りの1つ


・オススメ度:B+
少々思い描写はありますが、十分許容範囲内だと思われますし、システム周りキャラデザなども一定レベルの基準はみたしてます。
シナリオが良いのでオススメはしやすい作品です。


感想・考察・気になった点

[感想]
1番の評価ポイントはキモである伝奇パートでファンタジーに逃げなかった事です。
田舎の雪国に伝わる雪女の伝説 冬だけ現れる姉と名乗る謎の女 戸籍が無く風呂が苦手 ここまで揃えば深雪=霜神=人間では無いとして霜神の伝承をなぞらえて最後に深雪が消滅する感動ストーリーに持って行きたくなるのが普通です。
しかし本作は、あくまで伝承には本来の理由があり 霜神も蓋を開けば飢饉時に食料となった山人の事だと描写しています。
伝奇モノは元祖である痕がファンタジー要素沢山出会ったため以降の作品も多かれ少なかれ現実離れした設定を組み込む事多いと言えます。そんな中しっかりと伝承に理由をつけて現実路線で正面から書きあげたライターさんは流石であると言わざる得ません。
このような作品がもっと増えて欲しいと願うばかりです。


[考察]
本作は「霜神伝説」「山人」「禁忌」
この3つのキーワードを元に話が展開されていきます。

◯霜神伝説
もっとも話の中核を担っている設定
簡単に説明すると霜神と呼ばれる神が飢饉時に現れ自らの体を砕き、里に富を与えるといった伝承となっています。

中盤までは、この霜神が人ならざるモノとして実際に存在するかのように描かれていますが、深雪END3にて霜神とは村人に対し飢饉時に献上された山人の事だと判明します。
自らの体を砕き里に富を与えるとは文字通り 自らの体を切り取られ食料として里に振る舞われたことの比喩です。
食人という禁忌を犯した罪を誤魔化すため自分たちが食べたのは人では無く神だからセーフという意味を込めて霜神伝説が誕生しました。

◯山人
山人とは山で暮らす人々の事であり、本作独自の設定では無く実際に柳田国男と呼ばれる民俗学者により提唱された民族の総称です。もっとも自分は、本来の山人をイマイチ把握しきれていないため、ここでは雪影の設定のみで書いていきたいと思います。
雪影における山人とは、上山村周辺の山に古くから住んでいる民族のことである。この人々は殆どを山で過ごし冬になると里に降りて生活するといった風習があるといった設定です。
この際に上山村にメリットが無ければ山人を里に住まわせる理由が無いのだが、ここで関係してくるのが上で説明した霜神伝説です。つまり生贄を貰う代わりに冬の間のみ山人を匿っていました。
そのためこの食人によって繋がっていた関係が理由で、作中の上山村では山人の話題が禁忌になっています。


◯禁忌
ここでの禁忌とは2つの意味がある。
1つが三大禁忌と呼ばれる、「殺人」「食人」「近親相姦」のことであり時代地域問わず基本的にこの3つが禁忌の中でもレベルが高いとされているそうです。
2つめの意味が約束事としての禁忌です。作中で鶴女房や雪女などのお伽話になぞらえて説明されていて、鶴女房ならドアを開けるな 雪女なら秘密を話すなといった約束事のことです。
基本的にこれらのお伽話では主に男側によって破られ悲恋となって終わっています。その流れを汲んでか本作では主人公約束を破り姉が消えるといったENDが多いです。もっとも雪影の主人公と姉は鶴女房や雪女などのようにはっきりとした約束を交わしたわけではありませんが…


◯本作が伝えたかったこと
本作が伝えたかったこととは、その場に留まって燻り死ぬくらいなら前へ進めといったテーマを感じました。
作中で三大禁忌を破るほどの変化を見せたのは、深雪 主人公 主人公の父のみですが、一般的なレベルでの変化で前へ進んだキャラは多いです。
紫子は主人公に対する恋心で女らしく変わり 香里も紫子と同じく恋心で引っ込み思案な性格を直しています。
友文、道成も自らの進路を決め前に進んでいますし、姉である深雪に至っては人を食べてでも生き残り主人公父との約束を果たそうとしました。

では主人公はどうか?END1〜3では姉の正体から目をつぶって停滞し続けていた主人公は最後には姉を失い心を壊しています。
一方で紫子、トゥルーENDでの主人公は前へ進むことを選び幸せを掴んでいます。
紫子ENDでは止まっていた時計を新しくし家を立て直す決意をし 姉のいない世界でも紫子と新しい時を刻んでいく強さを手にしました。
トゥルーENDでは現実から目をそらし続けていた自分を自分自身で否定するように吹雪の中、挫けそうになる心を叱咤し一歩一歩倒れるまで進み最終的に姉とずっと一緒にいる約束を達成しています。

「禁忌を犯す覚悟を持ってでも前へ進め」
これが本作が伝えたかったメッセージだと私は感じました。

[気になった点]
結局主人公と深雪は血縁関係があったのか無かったのかの部分が気になりました。
主人公の写真がある一定の年齢になるまで無い 蝉丸が主人公父に子供がいるのを知らなかった。 主人公は山人の血を継いでいる。
この辺の描写で実の姉弟なんだろうなぁとは思いますが、どうもネットの感想を見ると血が繋がって無いと解釈している人もいるみたいなんで少し疑問です。


総評
[総評]
安定して面白いシナリオに姉ゲーとして特化した部分があり十分良作と言える作品です。
古い絵柄でも問題ない人には是非やってみて欲しい一作です。

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