黄昏のエロゲ感想/a>

黄昏のエロゲ感想

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消えた世界と月と少女 感想


作品概要・評価点(ネタバレ無)

[作品概要]
誰もが知っている「かぐや姫」という昔話を軸に謎を展開していくオーソドックスな伝奇モノです。
基本的にはホラー&ミステリーですが、異能バトル要素も取り入れており退屈にならないようなストーリーとなっていました。
伏線回収もしっかりしており全体的に完成度の高く良作と言える作品です。


[評価点]
シナリオ:A+
キャラ:A
ビジュアル:S
世界観:B
演出:B-
音楽:A
オススメ度:A

総合点 82点



評価点詳細(ネタバレ有)













[評価点詳細・感想]

・シナリオ:A+
よく練られていながらシンプルな内容のため理解がしやすいシナリオです。
ミステリー 伝奇 感動とどの部分においても疎かにしておらず十分なクオリティに仕上がっていました。
一方で個別ラストのマンネリや敵キャラの持て余しなどの改善点も多々あり


・キャラ:A
メイン サブ共に魅力的で特に表十二単の面々はデザインや設定が非常に素晴らしく、本作の要といっても良いかもしれません。


・ビジュアル:S
綺麗よりも可愛い寄りの絵柄なので明るめの塗りがよく映えたデザインになっています。
ホラー場面では、絵のタッチを変えてテキストに対して浮かないように配慮されており、その点も個人的に高評価ポイントです。


・世界観:B
少し規模を大きくしすぎかな?といった感じです。
竹取物語がモチーフなので月を舞台にするのは当然と言えば当然なのでしょうが、できれば基本は地球で物語を展開して欲しかった感はあります。
とは言え最期の謎に使われるトリックのオチがオチなので難しいかもしれませんが…


・演出:B-
ややマイナスポイント
心臓の鼓動や主人公が違和感を覚えるシーンなどで特徴的なSEを流す演出が多用されますが、どうにも本作の世界観にあってないような気がしました。
特に緊急地震速報のようなSEは最後まで慣れる事なく作品を終えてしまいました。


・音楽:A
作品の雰囲気に合わせた曲調が多く、「otherworldly atmosphere」などは盛り上がりで使用しやすく静かなシーン悪目立ちしない名BGMであると思いました。
挿入歌の中では星霜の轍が頭一つ抜きんでていて、発売後も話題になったらしいです。


・オススメ度:A
ややシリアスがキツイのと若干超展開寄りなのを除けば理解しやすい初心者向けのシナリオと言えるでしょう。
逆に言えば後付けや無理矢理な展開が無い分ある程度の数をプレイした人だとオチの予想がつきやすい作品かもしれません。

[感想]
昔からの伝承が実は宇宙人由来のものであり、登場キャラの大部分がその血を引いている。
このような元祖伝奇モノである痕をリスペクトした設定にしっかりと作り込まれたシナリオが秀逸の本作品。
共通の謎と失速感はあるが重要な謎の鍵を探す個別 トゥルーの答え合わせ、そして最序盤の選択肢の意味と感動のラストと構成が良く無駄な描写をなるべくしないように配慮されたストーリーでした。変に難解な表現や設定を使用しておらず、分かりやすいのも伝奇モノとしては良い部分であると私は思います。
ガチガチのシナリオゲーが評価されにくい中ギャグ要素を極端に排除した作品を出してくれたのは素直に喜ばしい事です。 欲を出すならば、魅力のあるキャラ設定を活かし個別の恋愛描写やイチャラブにも力を入れたキャラゲーとしても楽しみたかった感はあります。




考察・気になった点

[考察]

今回は各ルートごと描写が少なく考察が必要だと思った疑問点を中心に書いていきたいと思います。

〜共通ルート〜

●血文字の警告文を書いた人物
この出来事が起きた時に主人公一行が調べていたのは母である沖名明に関してであり、この情報を知られて困るのは十二単よりは月の使途側です。よって月の使途がおこなったと言えるでしょう。
では、月の使途の「誰」が行ったのか?
私は「美衣奈」か月の主側近の「姿を消す能力者」この2人のどちらかであると推測しました。美衣奈だった場合は月の使途メンバーだったので、ある程度は明の死に月の使途が関係している事を知っていて主人公たちを守るために行った行動 一方 側近の場合は文字通り警告であり知られると不味い情報だと判断したのだと思います。
主人公は警告文発見の際 姿は見えずとも視線のようなものを感じています。トゥルーにて側近の能力は姿のみで気配までは消せないと判明しています。そのため状況的に判断するのならば可能性としては、3割で美衣奈 7割 側近といったところだと私は予測しました。


〜つばめルート〜

●椿 失踪の理由
椿に関しては、クローン技術発展のための実験台にすぎないのだと思います。
瑠衣ルートで判明する過去の神隠し=月で散吉郷住民のクローンを作り終えたら地球に戻しているという事なのでしょう。 つばめは幼少期に神隠しに会いクローンである椿が誕生したのちに地球に戻されたと考えられます。椿が失踪して会えなくなったのは、月に連れ戻されたから筋が通ります。
実験施設から逃げ出した椿がつばめ母に保護された部分 もちろん施設が月にあるわけですから、つばめ母も月にいることになり、つばめ母は月の民である可能性もあります。
もっともこのルートに関しては特に大筋との関連性は薄いと思いますが…


〜杏子ルート〜

●白八と杏子の関係
このルートでは白八の存在がよくわからないポイントです。杏子の兄である彼ですが、いつ兄となったのでしょうか?
幼少期武留を助けたのは間違いなく十二単と名乗る白八であり、この時点では地球にいた事になります。月の民である十二単がなぜ地球にいたのか?彼の正体は何なのか?

この謎は杏子と白八の関係から、ある程度まで推測する事ができます。
羅刹に偽物の妹と言われた場面から、この時点の杏子と白八の関係は単純に血が繋がってないorクローン体に過ぎないこの2つの解釈ができます。

クローン体の場合はオリジナルの杏子とは血が繋がった地球人で十二単にスカウトされ基本的には地球で活動を行なっていた。武留を助けたのも地球での活動中の出来事といった解釈
血が繋がってない場合は、杏子とは何の関係性もない月の民であり武留や杏子の記憶は月に連れてこられた時に植えつけられた作りもの記憶と考える事となります。


〜瑠衣ルート〜
タイムリープのトリックに関する伏線や瑠衣なりの異能力およびかぐや姫の解釈が語られるルート 基本的には曖昧な部分は無いが、アキラナオキの描写で一部考察の必要な点があります。

●アキラナオキの処刑について
アキラナオキの正体はトゥルールートで主人公の母である沖名明である事や彼女がかぐや姫殺しの罪を被り処刑された事などが判明します。そして この処刑方法が瑠衣ルートで語られていますが、その内容は「器の儀」によく似た方法がとられています。
これは、かぐや姫が死んだ直後でセレネを閉じ込める贄を早急に用意する必要があった故に処刑ついでに明の死体を有効利用したのだと推測できます。
ここで疑問点として上がるのがアキラナオキの死が地球に伝わっている理由です。 彼女は月の民である事は明白であり五伴緒や十二単が月にいる事から処刑も月で行われたと考えるのが自然です。では何故地球で新聞記事が書かれ器の儀で使ったであろう死体も地球の警察が処理したのか?
この事件を知った後に瑠衣がプレミアのついたアキラナオキの本を手に入れた描写があるため、月に作られた散吉郷にのみに用意された情報では無いと分かります。なぜならば
アキラナオキ怪死事件発覚→本プレミア化→瑠衣が本を確保\ここまでは地球の出来事\→瑠衣が主人公に事件を伝える
このような流れになるからです。
器の儀で用意された贄に関しては情報がありませんが、素直に考えればセレネを封じ込めた死体を処分してしまうのは、不味いはずですが地球の警察が発見した以上処理されたと考えるのが一般的でしょう。
こうなってくると益々 五伴緒がわざわざアキラナオキの死体を地球に放置ないし運んだのが謎になってきます。残念ながら、この疑問に関して私は納得のいく答えを見つける事ができませんでした。


〜美衣奈ルート〜
他3つに比べて圧倒的に情報量の多いルートですが、それ故に力も入っているのか矛盾点などはありませんでした。
しかしひとつだけ気になった用語があったので考察していきたいと思います。

●ロストナンバーについて
月の使途アジトにて主人公に対して使われたロストナンバーという言葉
これは文字通り手の甲にあるナンバーが無い被験体の事を指しているのだと言えます。
美衣奈ルートでは主人公がロストナンバーだと発覚した際即処理せよといった命令が下るのですが、この理由は2つほど考えられます。

・説①
番号が無い=最後の生き残りである主人公の可能性ありとなりアキラナオキ蘇生のために器の儀を行う月の使途は輝久夜を成長させる必要が無い。
そのため、とっとと殺し腕だけ持っていこうとした説

・説②
共通ルートの時に生活していた村人の生き残りと判断し、その場合表向きループのカラクリに気づいている可能性アリと思われた。
この時アジト内には浮老がおり表向き十二単と協力関係にある月の使途は輝久夜成長の失敗となり得る存在に対し対処しなければならなかった説

どちらの説でも話の流れ的に違和感なく展開する事が出来ると言えます。


〜輝久夜ルート〜

語り部について
瑠衣及び主人公月の王ENDにて語り部さんが登場します。
輝久夜タイムリープENDで分かる事ですが語り部=元祖かぐや姫であり、輝久夜が身代わりとなっていない世界線では既に死んでしまった身です。では何故存在し得ない彼女が登場したのか?
ここからは完全に妄想となるのですが、歴史改変前にいた語り部はエピローグにて輝久夜を復活させたのちに、IFの世界である主人公月の王ENDの世界選に能力を使い移動をした歴史改変後の語り部だと考えると面白いかもしれません。

語り部(元祖かぐや姫の能力)
タイムリープと穢れの浄化が、かぐや姫の能力なのに世界線移動(タイムリープでは無い)が出来るのか?という点ですが 私は可能だと考えました。
そもそも元祖かぐや姫の力に確定した情報は無いため描写のみで判断するならば、その力とは「能力使用者が思う他者を幸せにする願いを叶える能力」となります。 ここで重要なのが「能力使用者が思う他者の幸せ」という部分です。つまりセレネ誕生の原因のように結果として他者の不幸となる願いにも力は発揮されるという事です。
よって月の王ENDの出来事を語り継ぐ事が主人公及び輝久夜にとって幸せだと判断したから、語り部は能力を使い世界線移動を成功させたと私は考えました。


〜全ルート〜

●ライターが伝えたかった事
穢れ(悪)を穢れ(悪)と認めなければ、それに対する対策を講じる事もできなくなってしまう。穢れ(悪)を認める事でその行動は初めて浄化(正義)となり得る。つまりは穢れ=浄化となる。
これは作中で述べられていた事を要約した言葉です。
もし上でおこなった語り部の能力の考察があっているならば、他者の幸せを願う輝久夜と自己の防衛を願う主人公のは穢れと浄化のように相反する存在であるとなります。相反していながらお互い惹かれあった輝久夜と主人公達により穢れ=浄化を表現したのだと考えられます。


この穢れを認めてることで正義となりうる事は作品の世界だけではなく現実世界へのメッセージでもあると思います。作中では災害といった表現がよく使われていたように感じました。セレネや共通で主人公が起こした土砂崩れなどが筆頭です。
環境破壊を繰り返す人間に対し、いつかセレネのように災害のしっぺ返しがくる
それに対抗するには、環境破壊=悪だと認める事から始めるべきだ。本作全体を通して このようなライターの警告が聞こえてくるようなシナリオであったと私は感じました。



[気になった点]
やはりシステム面に関しては少々気になりました。必要最低限の設定項目しかなく2018年に発売された作品としては、かなり低レベルなものだと言えます。
この部分を改善し十二単のストーリーを追加した完全版が出る可能性があるらしいので、それを待つのが正解なんですかね…?
個人的にはシステム改善パッチとかを配布すべきなのかなぁ…?とか思ったり思わなかったりしました。

後はカルマに関しても残念だった言えます。かぐや姫と主人公 輝久夜を繋ぐ重要なポイントの1つにこの「カルマ」があるのですが、描写があまりにも少なすぎてなんとやらといったところ…
公式サイトに載っている情報の方が本編で提示された情報よりも、詳しく書かれているってどういう事なんですかね?



総評・余談
[総評]
一部酷評もしましたが、全体的なクオリティが良く総合点も高いです。
どちらかと言えば超展開やセカイ系苦手な自分でもかなり楽しむ事が出来たので、セカイ系が好きな方ならば、気にいる事間違いなしだと思います。
上で書いた完全版の噂が本当ならば是非予約して発売日当日に楽しみたいと思えるレベルでした。
初心者向けにはちょっとクセが強いかもしれませんが、伝奇モノの入門編として非常に勧めやすい、そんな作品でした!




[余談]

完全に余談となりますが、個人的にタイトルの真ん中にあるウサギが凄く秀逸だと感じました。
本作のメインとも言える月とそれに関係したウサギ そして平仮名の「と」をモチーフにしたデザインですが「ウサギ=兎=と」 このように「と」をデザインに入れなくてもシッカリと「と」と読めるようにされているのは良いなぁと思いますね〜

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