黄昏のエロゲ感想/a>

黄昏のエロゲ感想

エロゲ感想ブログ たまにオススメ書いたりする。

ドキドキ文芸部 感想

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作品概要・評価点(ネタバレ無)

[作品概要]


[評価点]
シナリオ:A+
キャラ:B-
ビジュアル:B+
世界観:B
演出:S+
音楽:B
オススメ度:A

総合点 80点



作品概要・評価点詳細(ネタバレ有)












[作品概要]
海外で制作されたギャルゲー
1番特筆すべき点は、物語中盤から一気に方向性がガラリと変わる部分です。所謂上げて落とす手法が使われておりごく普通のギャルゲーだと思ってプレイした人ほどショックが大きい作品です。
もっともリリース開始直後に話題になった上これだけ期間が経った後 ホラーであることを意識せずやる人もいないと思いますが…
個人的な感想としては、非常に面白かったのでボリュームアップ版なんかをやってみたいかな〜とか思ったりします。



[評価点詳細]

・シナリオ:A+
良くも悪くもパンチが効いたシナリオです。人によって合う合わないはあれど最初から覚悟して始める事さえできれば大半の人は楽しめる内容だと思います。
特にホラー面に関してはかなりの高水準を叩き出していると言えます。

・演出:S+
本作でもっとも評価できるポイント
自分が深夜にやった事も作用しているとは思いますが、それを加味したとしても、かなりレベルが高いです。
緩急を意識してプレイヤー側が油断した時を見計らったかのようなタイミングでの演出は目を見張るものがありました。


考察・気になった点

[考察]


●ドキドキ文芸部という世界
本作におけるドキドキ文芸部とは主人公(プレイヤー)に恋するようにプログラムされた3人のヒロイン+モニカからなるゲームの世界として描かれています。
その為、どれだけ頑張ったとしてもモニカは主人公と結ばれない訳ですし、ヒロイン達はは物語が進むに連れて主人公と惹かれ合います。
これが本作における絶対的な条件として終盤まで関係してきます。





●モニカについて
上で説明した世界の絶対条件を壊そうとしたのが他でも無いサブキャラのモニカです。
モニカは現実世界(プレイヤーの操作するPC)のスクリプトを弄る事によりキャラの性格を変える、キャラそのもの存在を消す、進行しているストーリーの全容を把握するなどなどドキドキ文芸部の世界における神のような力を持っています。
ではなぜモニカは世界を壊そうとしたのでしょうか?答えは単純で、プレイヤーと自分以外はプログラムされた人形でしか無いと気づき更に自分がサブキャラで唯一自分と同じ確立された自己を持っているプレイヤーと結ばれる事が無いと知ったからです。


ここで文芸部部長の力について触れておきます。

◎文芸部部長の力について
大雑把に言ってしまうと、「ドキドキ文芸部」というゲームのスクリプトを弄る事が出来る能力です。自我の芽生えはこの力に付属する現象だと考えられます。

つまり作中の出来事(サヨリの消滅、キャラの過剰な性格変化、バグ、ユリの自殺等々)はモニカの力では無く、文芸部部長の力によるものだと言えます。
この事はモニカ消失後 サヨリが部長になった世界線での描写(サヨリスクリプトを弄り主人公と二人だけになろうとした場面)から推測する事が出来ます。





●ヒロイン達の自我について
これまでの考察で述べてきた事象はモニカ及びサヨリが自我を持ったため起きたものです。

ここで本当に文芸部部長は自我を持っていたのかという疑問が浮かびます。
要は「文芸部部長になった者は自我が芽生えたかのように振る舞いスクリプトを変更出来る能力を手にする」とプログラムされていたのではないか?といったものです。

私はこの疑問に対し、むしろ登場キャラ全員自我を持っていると考えました。これはモニカ終盤の行動から推測出来ます。例えば暴走したサヨリを消しゲームデータを全て破壊した場面
この時のモニカは文芸部部長の権利をサヨリに譲っているため、もしも部長=自我が芽生えた行動をするという条件に当てはまらずサヨリの決めたスクリプト(主人公とサヨリ二人だけの世界を実現させる)に沿い、たとえ部長の力の残滓を使いゲーム全てを消す事ができたとしてもそれを行使しない筈です。しかし作中ではそれに抗い全てデリートしてしまいました。
ここで私は部長の力=自我を芽生えさせるないし、芽生えたように行動させるものではなく、部長の力=自我を自覚させるものだと考えます。つまるところモニカ サヨリ ユリ ナツキ全員気づいていないだけで自我を持っているのです。

モニカが最後に自分自身を犠牲にしてまで全てを消したのは、部長の力を失ってなお自我を持つ自分の状況から全員自我を持っていると推し量り、無理矢理にでも綺麗な文芸部のまま終わらせようとしたのだと思います。(人形だと思っていた他ヒロインに自我があると知り 今までのドキドキ文芸部世界での生活から友情を感じ、ヒロインとプレイヤーのためを思い、これ以上プレイヤーにヒロイン同士の醜い争いを見せないため)




●EDを歌っている人物
順当にいけばモニカでしょうね。
ピアノを最近始めた設定もあったので最後に弾き語りをプレイヤーに披露したといった所でしょう。
ただ英語なのが残念なところ… そもそもが海外作品なのでしょうがないと言えばしょうがないですが…



[気になった点]
尺の関係でカットされたであろうヒロイン達のトラウマ(鬱、リスカ、虐待等)部分の掘り下げが欲しかったな感
結局このトラウマ周りは匂わせるだけで特になんも無かったわけですしね… 出来ればもう3時間分ぐらいボリュームアップしてモニカがスクリプトをいじる以前の正規ルートを楽しめたら面白いかなと思いました。
3人クリア後モニカに自我が生まれ、サヨリ自殺の流れとか良さそう。


総評
[総評]
少なくとも商業モノだとあまり発売できない冒険設定なので新鮮味があり非常に面白かったです。今までやってなかったのがもったいなかった…
このサークルから新作が出たら絶対にプレイしたいと思うぐらいには良い作品でした!

ATRI 感想

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作品概要・評価点(ネタバレ無)

[作品概要]
フロントウィングと枕が組んで制作された本作品
有名メーカー2つだけあってBGM、グラフィック、システム面などなど ロープラながらフルプラに負けないレベルの完成度を誇っていました。
衰退した近未来の優しい世界観が特徴で非18禁であるため初心者向けであると言えます。


[評価点]
シナリオ:A-
キャラ:A
ビジュアル:S+
世界観:A
演出:B
音楽:B
オススメ度:A

総合点 85点



作品概要・評価点詳細(ネタバレ有)












[評価点詳細]
一部特記すべきと思った評価項目の詳細を書いています。


・シナリオ:A-
AIの自我をベースに人間としての生き方や過去と未来、感情の移り変わりなどのテーマで描かれたストーリー
シリアスなシーンはありますが基本的にネガティブな描写は極力少なめに抑えられており気軽にプレイしやすくなっていました。


・ビジュアル:S+
最も特筆すべきポイントかと思います。
キャラデザは可愛いよりですが塗りは美麗系で、この2つがうまくマッチしたデザインです。
立ち絵と一枚絵のクオリティの差も少なく非18禁なのが悔やまれます…(裸立ち絵とか見てみたかった)


・演出:B
このタイプの作品は過度な演出がお約束みたいな印象でしたが ATRIはそんな事なく水の描写(潜水時や雨など)以外はかなりシンプルな出来でした。
個人的にはアトリが感情を自覚するシーンなどで粋な演出が入ったら良かったかなーとか思ったり思わなかったり…



考察・気になった点

[考察]

●本作のテーマについて
ATRIでは、AIの感情と生きる時間の2つがメインテーマとして語られています。そこで、まずはこれらについて書いて行きたいと思います。


・AIの感情について
この手のジャンルでは最早欠かせないAIに自我はあるのか?といったテーマです。 作中では分かりやすい指標として喜怒哀楽を感じるか?自分で考えて行動する事ができるか?などがありました。

結論から言ってしまうとアトリには自我がありました。まぁここで結局感情の無いロボットでした!みたいな展開になったら大顰蹙でしょうしそりゃそうかといった感じですかね…
喜怒哀楽に関しては、以下のような描写から感じ取る事が出来ます。


喜→主人公との恋が成就した時

怒→主人公や主人公母が傷つけられた時の暴力事件

哀→マスターを失った時

楽→寿命が近づき学校での生活が楽しいと気づいた瞬間


また自分で考えて行動できるかに関しても本編のさまざまな部分での命令違反や意図的な嘘などの部分から分かります。


本編中盤にて主人公がアトリのログを見て全てが経験からの予測行動 プログラムされたものと知り 自我があるかどうかを疑う場面があります。
これに対し自我が無いのにある振りをするロボットの振りだと露見させる事により感情の芽生えを表現(時系列的には作品開始時から自我はあったが読み手への分かりやすい転換部分としての表現)したのは面白かったが、この振りの理由が本人すら感情を自覚せずロボットらしさ発揮するための行動だった点が少しうーんと思いました…
例えば主人公を守るために無意識的にに感情が無い振りをしてたなどの方が展開的には好きだったりします。



・時間について
もう1つのテーマは時間、ここで書く時間とは大きく分けて3つ 「過去」「今」「未来」に関してです。


過去:個を形成するもの、乗り越えるべき壁

今:過去の意味と未来の結果を決める場面

未来:希望、進むべき道


それぞれ、このようなメッセージが込められており作中では基本的に過去<未来<今の順番で素晴らしいものであると描かれていたように感じました。
確かに崩落事故の後遺症やAI暴走事件などの過去は忘れる、乗り越えるべき 「今」この瞬間がずっと続けばいいなどがその最たる例です。
とは言え決して過去を蔑ろにしているわけでは無く、過去があるからこそ生まれたアトリのログは主人公がアトリの感情に気づく所ややトゥルーでの電子世界などで重要なファクターとなっています。

要は、嫌な過去や辛い過去は忘れてもいいが、その他の「過去」は「今」の為に必要なものであり「未来」へ歩むきっかけである。このような事をライターは伝えたかったのだと考えます。




●アトリの願いと幸せとは?
アトリにとっての願いは幼き頃の夢である世界を救う努力する主人公と同じ時間を過ごすことなのだと感じました。
故にその夢を放棄したアトリとその周辺のみを救おうとした主人公を嫌いと称したのでしょう。 つまりアトリにとって主人公が自分と一緒にいる事より世界を救うことの方が重要である事が分かります。 世界=アトリを含むとするなら、より救う者が多い方を選ぶのは当然です。
しかしながら未来を歩むべき主人公にタイムリミットが迫っているアトリは同じように進むことは出来ません。
つまりアトリは主人公とともに歩み幸せを感じる「今」より、自分がいない「未来」を救ってほしいという願いを託したのです。アトリは幸福より主人公と自分の願いを優先度が高いと言えます。


しかしながら物語としてアトリが死に 主人公が未来に向かって歩むENDでは少し後味が悪いです。
そのため最後の1日である「今」を切り取り保存し、主人公が未来を救い終えてから電脳空間で気の済むまで二人で過ごす事でアトリの幸せである2人並んで未来への歩みを進める「今」を擬似的に再現したのでしょう。
このような手法をとりアトリ復活などの御都合主義に走らず幼き主人公の願いを叶え、アトリ目線で見てもハッピーエンドにしたのは流石であると思います。
副題のMy Dear Moment
直訳すると「私の親愛なる瞬間」的にも電脳空間で最後の1日を引き延ばし今この瞬間を永遠に過ごすのは理にかなってENDです。










[気になった点]
やはり非18禁なのと所々の展開が優しすぎるのが気になりました。
特に序盤アトリ→中盤の自我無しアトリの流れに対し、自我無しアトリ→自我自覚アトリへの転換が違和感を感じました。感情を自覚しつつも何処かぎこちなさが残るような喋り方を期待したのですが、即明るいアトリに戻ったのが優しいすぎるなぁ…と思ってしまいます。

非18禁に関してはまぁしょうがない事なので特に触れませんw


総評
[総評]
分かりやすくテーマが示されており理解しやすいシンプルなシナリオ
美麗なグラフィックに使いやすいUIと減点ポイントが少なく優等生的な本作品
中盤見せた不穏な雰囲気がアッサリと分散したのは残念ですが、その点も初心者向けでストレスフリーと考えればむしろ高評価ポイント
最後もテンプレに走らず変わり種で締めくくった所もおもしろいです。
総合的に見たらかなりの良作であると言えます。

サクラノモリドリーマーズ 感想

作品概要・評価点(ネタバレ無)

[作品概要]


[評価点]
シナリオ:B-
キャラ:B+
ビジュアル:A
世界観:A
演出:A-
音楽:B+
オススメ度:B+

総合点 73点



作品概要・評価点詳細(ネタバレ有)












[作品概要]


[評価点詳細]

・シナリオ:B-
共通は楽しめたが個別ルートが今ひとつ伸び悩んだ印象
共通ラストの成仏をトゥルールート枠として追加するなどの方法を取れば締まりも良くなったかもしれません。


・世界観:A
ボダッハを中心にホラー重視で展開されていきます。特にプロローグのワクワク感は見事です。
もっともそこからの失速していきますが…


考察・気になった点

[考察]

●メインテーマ

本作では共通と個別、暮羽ルート毎に異なるテーマが主として据えられていたので、それらについて考察していきます。



『共通ルート』

共通では加害者側の心理 特に「異常性愛」についてに焦点が当てられていました。 以下が各章にでてきた性愛をまとめたものです。


1章:カニバリズム (守安明雄)

2章:対物性愛 (葛木朋成)

3章:サディズム (塔野沢亜里砂)

4章ホモセクシャル (塚田良平)


このように各章のメインとなる人物はそれぞれ異なった性愛感情を有しており、塚田以外ボダッハ赤に取り憑かれ殺人犯としてサクラノモリドリーマーズに倒されています。
このことからもライターが異常性愛=悪として描いた事は明白です。(塚田に関しては殺人をしたわけでは無く、被害者(レイプした事は置いておく)としての面が大きいため、同性愛は否定していないと思います。





『個別ルート』
個別ルートでは、共通とは正反対に被害者と残された遺族に焦点の当てられたストーリーとなっていました。

簡潔にまとめるならば「死んだものに囚われて、その場で停滞しておらずに自分の道を進め」がテーマです。これはまどか成仏時の追いついた追いつかないのやり取りからも分かります。


しかしながら、このテーマは共通に比べると力の入れ具合があまり感じられず、とりあえず個別のシナリオ困ったからこれにしとけ感が凄かったです。
もともとシリアス調が有名なライターなので明るい話は得意じゃないせいかもしれませんが…




『暮羽ルート』
ヒロインが暮羽である必要が少なく実質秀さんルート…

ここでは秀さんと共通の犯人たちとの一番の違いが挙げられています。それは何か?
答えは、単純で人を(性的な意味も含めて)好きになるかならないかです。

秀さんは幼少期に性器をダメにされる+人に執着しない事から異常性愛により殺人を行なっていたモノとは根本的に違う事が分かります。
主人公や両親に対して執着していたような描写があるが、これは自分の存在理由を確立するためのもので裏を返せば自分自信に執着しているのと同義と言えます。

ライターがどのような意図を持ってこのような差異を描写したのかは不明ですが、この違いによりジョーカーとその他との明確な差別化ができており個人的には良い設定であると思います。


肝心のテーマですが、ここでは自己の確立について述べられています。
自らを悪と設定し主人公を正義とする事で存在理由 自己の確立をしようとした秀さん
結果としてのは主人公に殺されなかったせいで自己の確立が達成できず、自己が無い=空っぽ=思い出す現実となり
思い出す現実が無いから深層から抜け出せないといった結末を迎えてしまいました。







[気になった点]
やはり個別の失速具合が1番気になりました。メインルート扱いであろう暮羽ルートもイマイチ乗り切らず、プロローグ>共通>個別の順で面白いのは如何なものかと思います。
基本的に名作と呼ばれる作品は終盤になるにつれて面白くなる、又は大トリを飾る場面だけが最高に良い事が多いので、それだけで本作は名作になり得ないとも言えましょう。
期待していただけに少し残念な結果です…


総評
[総評]
総合的に見ると自分的には評価が低い作品となってしまいました。
73点という点もキャラデザとプロローグ+共通の面白さといった部分が大きいです。
人には進めませんが、地雷レベルでは無いのでやって損はないかなぁ…といった具合です。







※同ライターの明日出逢った少女もオススメなのでできたらやってみてください…

スカーレット 感想

作品概要・評価点(ネタバレ無)

[作品概要]
日常に焦点を当てたシナリオが目立つねこねこソフトの中で非日常をテーマに描かれた比較的珍しいと思われる本作品

設定もハードボイルド系の映画にあってもおかしくないようなもので、退屈に感じるシーンの少ないエンタメ性の高いストーリーです。 それ故にねこ作品の中でも知名度が特に高く人気のあるタイトルと言えるでしょう。


[評価点]
シナリオ:A+
キャラ:A
ビジュアル:B+
世界観:A
演出:B
音楽:B
オススメ度:A

総合点 79点



作品概要・評価点詳細(ネタバレ有)












[評価点詳細]
一部特記すべきと思った評価項目の詳細を書いています。


・シナリオ:A+
当たり前の大切さといった人によっては助長に感じがちのテーマを取っ付き易く描いた良シナリオ
日常の対となる非日常を避けるべき障害では無く 表面上はアニメや漫画のような若者が憧れる世界としていたのは非常に高評価ポイントです。


・キャラ:A
やや短めの割に人数が多いので掘り下げが足りないキャラもややいますが、それを考慮しても十分魅力的です。
ちなみに自分のお気に入りはナセルとしずかでしかね〜


・オススメ度:A
思い立ったように始めても、腰を据えて始めても楽しめる作品なのでかなりオススメできます。



考察・気になった点

[考察]

●スカーレットにおける非日常
主軸となるテーマは「当たり前の日常のありがたみ」です。同メーカーのラムネなどでは、事故という非日常を用いて日常を壊し、当たり前を失う事でありがたみを表現していました。 この手法は後々の作品にも使われています。

一方でスカーレットに関しては少し違い非日常を「憧れや退屈しない世界」として描かれています。事実主人公である明人は自ら非日常の世界へと進んでいます。 この序盤での出来事が本作における重要なポイントとして最終盤まで深く関係していきます。





●スカーレットにおける日常
非日常が一般人による憧れの存在ならば「日常」は、しずか・九郎といった高級諜報員やエレナ・イリカといった重病人などの人達が求める幸せとして描かれています。
この事は3、4章にて重点的に描写されていました。





●日常と非日常の対比
上で説明した通りスカーレット内では「日常と非日常」を片や憧れ 片や得られぬ幸せへの渇望と設定しています。
これをシンプルに考えるならば非日常を求める者は今ある幸せを理解せずに一時の感情で平和を捨てるという事になります。
しかしながら、主人公である明人も最後にはしずかと共に捨てたはずの日常を選択しています。つまりライターにとって結局日常の幸せとは、それを失って初めて分かる幸せだと言いたいのだと思います。これは初めに触れたラムネと結局は同じ結論であると言えます。


この結論でいくと非日常の世界に身を置き続ける事にした九郎は幸せを知らぬままになってしまいます。

果たしてそうでしょうか?
自身も作中にて発言しているように九郎は生まれながらの諜報員で、ある程度成長してから別当家に入ったしずかや一般人の憧れから弟子入りした明人とは全く別物です。
つまり九郎にとっては非日常こそが日常であり本人が気づいていないだけで既に当たり前の幸せに身を置いているのだと私は考えました。




●しずかとイリカの違い
メインテーマとは少しズレますが、3章にてクローン問題についても書かれていました。 クローンで生まれた子供に人権はあるのか、オリジナルのコピーでしか無いのかといった点です。

率直に言うと、この問題は否定されています。レオンがしずかの臓器を使えなかった事からも明らかです。
何よりキャラの時点からエレナ イリカペアとしずかは大きく差別かされてデザインされています。(二人に比べて強気な性格、凹凸の少ないひんぬー体系、ショートカットなどなど)

よってライターはしずかをイリカとは全く別の人間だと捉えていると考えられます。






[気になった点]
物語序盤 主人公が学校へと復帰した際、しずかと同じ金髪の少女に声をかけています。 わざわざ立ち絵を出してまでの演出だったのでのちに関係してくると思いきや、なんの伏線回収も無かったので少し気になりました。 なんだったんですかね?



総評
[総評]
全体的に少し短めで諜報員パート掘り下げに甘い部分があること以外は高水準に仕上がった作品です。
ねこ作品の中でもかなりとっつき易い方だとは思うので、初心者にもオススメできます。
ただ個人的にはもう少し、テキストに片岡ともさんらしさを出しても良かったかな〜っといった感じです。エンタメ性を高めるためにあの独特の雰囲気を犠牲にしているように感じました。
無人島パートでは所々らしさが見受けられたのでこの場面をもう少し長くしてくれたら大満足のいく出来栄えであったと言い切れたと思います。好みドストライクにはあと一歩及ばずといったところ 残念…

ANGEL TYPE 感想

作品概要・評価点(ネタバレ無)

[作品概要]
minoriから出された本作品は正直同メーカーの中では知名度も低く、それに準じて評価もパッとしないものとなっています。
しかしながら、BGMや作品全体の描写および雰囲気などには一部目を引かれるものがあります。(事実自分もパケ絵に惹かれてプレイしましたw)
静かな作品が好きな方、特に一風変わった学園モノに興味がある方にオススメの作品です。


[評価点]
シナリオ:B
キャラ:B
ビジュアル:A-
世界観:A
演出:B
音楽:B
オススメ度:B+

総合点 72点



作品概要・評価点詳細(ネタバレ有)












[評価点詳細]
一部特記すべきと思った評価項目の詳細を書いています。


・シナリオ:B
テーマというか、ライターの書きたい事がフワッとしているのか分かりませんが全体的に薄味で訴えかけてくるものがありませんでした。
一部のルートや、部分的な良さが垣間見えるだけに少々残念…


・ビジュアル:A
時代を考えれば十分綺麗と言えます。
何より作風にピッタリの絵柄でタイトルにもあるANGEL 天使っぽさがどことなく伝えわってくるのが良いですね〜


・世界観:A
定時制の学校、鬱、トラウマ等の暗い設定がよく表現されていました。
極力明るい場面を移さないようにされていて全体的に静かで、しかしながらどことなく陰鬱とした世界観が魅力的です。



考察・気になった点

[考察]

●メインテーマ
本作をやっていて1番思ったのはテーマのブレです。どのルートも結論として何が言いたいのかよく分からず、尻切れトンボで終わっているENDが多いです。
主人公の心の病も、未憂の思いも、砂緒のピアノに対するトラウマも、詩希の猫に対する執着も、全て理由が不透明でパッとしないものとなっています。

よって私は、このボンヤリとした部分こそがメインテーマなのでは無いかと考えました。 要は、思春期特有の行き場の無い不安を、理由なき恐怖などを作品全体をハッキリさせないことで表現したという訳です。

とはいえ、仮にこれが本当にライターの思惑であったとしても、唐突に終わるラストやキャラに感情移入しずらい点などは 許容できるものではなく、このような手法は諸刃の剣だなーといったところ…
もう少しエンターテイメント性 終盤などの盛り上げさえしっかりとさせていれば名作になりえたかもしれないだけに残念




[気になった点]
やはり全体を通して水っぽいシナリオある点が気になりました。 せっかく世界観を巧く表現していても肝心のシナリオがイマイチだと良さも半減です。プレイしていて静かなのと薄味は違うと感じました。
コメディやバトル要素などの派手さはなくとも面白い作品というのは、ライターの力量がフルに出るので中々難しいとは思いますが、それでも頑張って欲しかったです…



総評
[総評]
割と酷評はしましたが、全体的には悪くない佳作だと思います。
わざわざ腰を据えてやるぞー!とまではいきませんが、プレイ時間も短く、値段も手頃なので箸休めにちょっと休憩的な気分でプレイするのに最適です。
特に迷子教室やユメミルクスリ等の作品が好きな人ならば、それなりに楽しんでやれるのでは無いかなーといった感じです。
まぁ…気になった方はやってみても良いかもしれません。

オススメの伝奇ゲー5選+α

内容説明

今回はオススメの田舎エロゲーを4つ選んでみました。
舞台が田舎であることのみで選んだので作品の評判はバラバラ
これから暑くなってくる時期なので夏ゲーが多めになっています。


作品リスト







作品紹介


痕〜きずあと〜

公式サイト: https://leaf.aquaplus.jp/product/kizuato/

参考価格:3000〜4000円

概要
やはり伝奇ゲーと言ったらコレ!
伝奇というジャンルを作り上げた作品で2度リメイクされるほどの人気作品です。 序盤に事件が展開されルートを進めるにつれてその原因や由縁などが明らかになっていくオーソドックスな構成で分かりやすく纏まったシナリオとなっています。
その他、おまけパートにも力が入っておりシリアス多めの本編とのギャップでついつい笑ってしまうような場面も多いです。

舞台が田舎の村で田舎ゲーとしてもレベルが高いのが個人的にも好印象


注意点
2009年に発売されたリメイク品には初代には無いストーリー(おまけエピソードでは無く、しっかりと本編に関係してくる設定)が追加されています。

こちらは、やや評判が悪く設定を崩すような展開があるので気になるの方は2002年のリメイク品、又は2009年版に付属で付いてくる初代をプレイする事をオススメします。















雪影

公式サイト:閉鎖

参考価格:4000〜4500円

概要
雪国舞台の姉ゲー 一応シナリオゲー枠ですが抜きゲーばりにHシーンが多く(ほぼ単独ヒロインでシーン数が30越え)イチャラブシーンも多いのが特徴
市場に溢れている伝奇ゲーとは一線を画する作品で多くの作品に触れている人ほど騙され、驚きも大きいかと思います。
詳しく書くとネタバレになってしまうので、ここでは省きますが、ライターの頑張りが伝わってくるストーリーです。


注意点
この作品も上で紹介した痕と同じくリメイク品が存在します。しかしストーリーが未完成で発売されておりハッキリ言ってしまえば地雷扱いされています。
なので、購入はリメイク前にしておくのがオススメです。















灯穂奇譚

公式サイト: http://www.mizu-kagami.jp/tousui/tousui_index.html

参考価格:1000〜2000円

概要
民俗学がテーマの作品で自分が伝奇ゲーで一番好きな作品を挙げろと言われたら、本作を選びます。それほどまでに凄い作品です。
何が凄いかと言うと民俗学部分の作り込み、そのものです。実際の史実とオリジナルの設定を違和感なく混じり合わせ
展開されるストーリーは素晴らしいの一言

また同人ゲーですが、音楽 CG 演出 システム面においても商業モノと肩を並べるレベルで、この点も評価できます。本記事で一番のオススメは間違いなく「灯穂奇譚」です!


注意点
終盤でシナリオの流れが方向転換するのが注意点かもしれません。
メインである伝奇部分の出来が良いだけにガッカリくるかも… とは言え中盤まででも十分お釣りが来るぐらいの名作なので、是非やってみてください。













消えた世界と月と少女

サイト: http://hiyoko-soft.com/sp/

参考価格:3000〜4000円

概要
異能バトル要素を足して、起伏が少なく人によっては退屈に感じることのある伝奇モノのエンタメ性を高めた作品
そのため序盤からワクワクした展開が続くので初心者向けと言えるでしょう。

肝心のシナリオも多少アラはありますが、それなりに設定が作り込まれているので考察しがいがあり、ある程度作品をこなした方でも楽しむことができるかと思います。


注意点
上で初心者向けと書きましたが、それは作品全体を指してのものであり、シナリオ面のみで見た場合は少々難解な面があるので注意が必要です。
もっとも大筋を理解するだけなら、そこまで頭を使う必要も無いので大袈裟かもしれませんが……














月影のシミュラク

サイト: http://www.high-level.jp/product/tuki/

参考価格:4500〜5000円

概要
伝奇ゲー代表メーカー あっぷりけから出た館モノ
シンセミアやコンチェルトノートのような目立った部分は無いが、安定したシナリオが魅力的です。プレイ時間10時間程度と気軽にできる点もよし

あっぷりけの中でもシンセミアに次いで好きな作品なので、沢山の方にプレイしてもらいたい一本です。



注意点
特にこれといった問題点は無いかと思います。あえて挙げるならば値段に対してボリュームが少ないのでコスパが悪いことぐらいか…





祝姫(全年齢)

サイト: http://07th-expansion.net/ih/

参考価格:5000円

概要
ひぐらしの鳴く頃にで有名な竜騎士07氏がシナリオを手がけたギャルゲー
全年齢ではありますが、割とギリギリを攻めており直接的では無く比喩ではありますが、レイプや幼児の性的被害などの表現も出てきます。 なんなら、今回紹介した作品の中でもダントツでダークかも…
過激な表現が多い割にシナリオ自体はかなり基本に忠実でシンプルに楽しめる出来栄えです。因みにホラー要素が結構多いので、その手のストーリーが好きな人には堪らないかもしれません。


注意点
エンディング後に後日談的なエピソード(結構長め)があるのですが プレイ後の余韻をぶち壊す上に内容も良いとは言えないので、読まない方が無難…






最後に
今回選んだタイトルは、どれも面白くプレイしがいのある作品たちですので是非是非やってみてください。

送電塔のミメイ 感想

作品概要・評価点(ネタバレ無)

[作品概要]
送電塔のミメイは同人サークル「TRUE REMEMBRANCE」から出された、サウンドノベルゲーム2作目です。
何処と無くヨーロッパっぽい雰囲気でファンタジー色の強い1作目とは様変わりし、和風テイストの伝奇モノとして進んでいく作品です。 システム面やキャラデザ、演出に関してもクオリティが向上しており、EDではアニメーションも追加されていたことから製作者も力を入れていた事が伝わってきます。

個人的な意見になりますが、TRUE REMEMBRANCEよりも本作の方が良い作品であったと感じました。




[評価点]
シナリオ:A-
キャラ:B+
ビジュアル:B+
世界観:A-
演出:B
音楽:B+
オススメ度:A

総合点 79点





考察(ネタバレ有)


●ミメイの正体に関して
のっけから、一番盛り上がるであろう、終盤のネタバラシについて触れていきたいと思います。
本作は序盤に「夜刀=コゴリの鬼」「ミメイ=鬼を祓う者」として説明され、以降もその様に進んでいきます。 しかし終盤にて一転「夜刀=鬼に憑かれた者」「ミメイ=コゴリの鬼(元祖)」と判明 今までの伏線が回収される構成となっています。


[伏線の一部]

・ミメイの髪が昔は長かった=夜刀のあったコゴリの鬼(元祖)は長髪

・やたら、ミメイの両親はまだ現存している事を強調した描写

・ミメイがやってきたのは夏であるのに、故郷は雪が降っていた発言=来た時期の差異(過去にミメイ(人間)が島に来た時は冬、ミメイ(鬼)が現れたのは夏)

等々…etc...etc…細かい伏線なども含めれば、まだまだあると思われます。


この様な序盤で提示されていた情報と逆の展開を終盤に持ってくるの手法は前作のTRUE REMEMBRANCEでも使われており、2作続けてプレイした自分としては、やや新鮮味に欠けてしまいました。
この部分は、もう少し違う展開 又は描写にする方が良かったのでは…と思ったり思わなかったり…



●演出に関して
本作はサウンドノベル(ボイス無し)という事もあってか、BGMにも力が入っていた様に感じました。 恐らくはフリー音源だとは思いますが、よく吟味して選んだのか主となる旋律を強調しつつも世界観を壊さない様な曲が多かったです。

またBGM以外の演出面も素晴らしく
一番印象的だったのは、EDムービー内のCGと夜刀目線の文章でミメイ消滅後の表現をしていた部分です。
この様な描写は商業モノでもたまに見受けられ(金恋、ナツメグひこうき雲の向こう側等々)個人的にも非常に刺さる演出なので、かなり印象に残りました。






●全体を通して
前作と比較するとメッセージ性が大きく損なわれている分 エンターテイメント性が大きく向上、フリーゲーム補正抜きに考えても伏線回収や演出、ストーリーなど良く出来ており商業モノと比較しても見劣りしない作品であると思います。






まとめ
目立った所があるわけでは無いですが、要所要所に光る点が見受けられ自分的にも満足のいく作品です。個人制作だと思いますが、それ故に出せるモノを全部出しつくした作品なのでしょう。
総プレイ時間3〜4時間と短くプレイしやすいので伝奇や田舎系のシナリオが好きな方には是非やって見てほしいです。

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