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黄昏のエロゲ感想

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蜜柑 感想

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作品概要・評価点(ネタバレ無)

[作品概要]
作中の主人公が描く物語を追体験するという、一風変わった設定の本作品
今でこそちょくちょくある構成ですが、発売当時の2001年では、かなり珍しい事が伺えます。 中々にこだわって作られたのか全体的に見れば佳作〜良作といった具合ですが、要所要所に名作たり得るオーラを感じる事が出来ました。
世界観が全く違う3作(現実編を含めれば実質4作)を楽しむ事が出来るので、飽きっぽい方でも最後までやり続けられるかと思います。 まるで何中夢の何写真みたいですねw


[評価点]
シナリオ:B
キャラ:B
ビジュアル:A
世界観:S
演出:B+
音楽:B
オススメ度:B

総合点 72点



感想
大手を振って面白い!と言えるものではありませんね… 変わった構成ありきといった感じです。

蜜柑は「病床にて」「怨毒の塊」「いつわりのおとこ」 計3つのエピソードを進めていく方式をとっているのですが、基本的にどれか1つだけを読み切る事が出来ず同時進行になってしまいます。 それ故に主人公の蜜柑への没入感や取り込まれていく描写を読み手側が実感出来ないのが難点だと感じました。
またトゥルーEND以外のオチがほぼ一緒なのも気になりました。せっかく3つの話を用意したのですから完結させる話によって現実編のENDを変えるなどをしてくれても良かったかな感
ただ当時としては斬新なシステムや繭実関係は目を見張るものがありますし、3つの話も序盤は正直動きが少なくつまらないですが、中盤過ぎたあたりから一気に展開が動き面白くなっていきます。特に病床にてのクローンのくだりは個人的に凄い刺さったのでコレをそのまま1作品に仕上げてくれても十分通用しそうだと思いましたね〜

なんだでしょうね… 期待以上でも以下でもない、想像していたのとほぼ変わらないものに仕上げてくれたなって、そんな感想を抱きましたw













考察

テーマについて
メインとして据えられているテーマは「未練への決別」であると自分は考えました。
病床にてでは、希目線での決別(過去に別れているクローン体たち)が表現されていましたし、怨毒の塊では繭実の呪い黒塊家と決別しています。 現実でも、そもそもの蜜柑の存在が主人公の希望、望みであり それを完結させ前へ進んだ事からも、過去のトラウマを腐食している事がわかります。

そういった意味で異質なのは、いつわりのおとこですかね… この話に出てくる主人公は記憶喪失で過去を持っておらず、繭実&希も似たような状態です。おまけに結末も別れや脱却とは正反対の終わり方でした。どちらか消えるはずの運命を変えて2人を1つの存在にするのは決別とは真逆の終わり方と言えますね〜
ですので、これにて関してはイレギュラー的存在 あえて真反対のテーマを描くことでメインを際立たせているのだろうと予想しました。 蜜柑を完結させなかったラスト BADENDのHAPPIYEND版とでも表現しましょうか。未練(願い)を抱いたままのラストという訳です。












繭実と希について
まず繭実の正体についてです。3つの話に異物として登場してきた彼女ですが、答えはシンプルで現実世界で主人公である素(はじめ)が過去に出会って仲良くなり そして離別した少女が元ネタです。

現実での繭実に関しては描写が少ないのでアレですが、
繭実と素出会う→仲良くなった繭実に素が自作小説をプレゼント(この小説名が虚なる器となる)→繭実が病気で死亡→仲良しの友達を失ってしまいショックで繭実に関する記憶を失う(この際 虚ろなる器も渡す相手がいなくなり未完に)→高校時代 先生と出逢った素は、既に繭実を失った後で、そのせいで無気力状態だった。 以降蜜柑本編

こんな流れかなと推測出来ます。一応先生が繭実の存在を認知しているので、記憶障害になったのは高校の途中からかも…
ですので、3つの話に登場する繭実は主人公が避けたい現実 記憶を消してまで忘れたかった思い人の死というわけですね… 故にイレギュラーとして出てくる繭実に対して無意識の内に拒絶反応を示していたわけです。


続いて希についてです。
希の正体は名の通り、「望み」 要するに素の願望が具現化した存在です。ですので その他の登場人物にモデルたる元ネタがいるのに対し希はオリジナルの存在でありハッキリ言ってしまえば単なる舞台装置に過ぎない訳ですね…
もっとも『『完全に』』オリジナルかと言えばそうではないのかもしれませんので次はそちらについて考察していきたいと思います。











繭実と希について②
上で繭実はトラウマの具現化、希はオリジナルの存在と言いましたが、果たして本当にそうなのでしょうか?

怨毒の塊やいつわりのおとこでは、双子 相反する存在等 少なからず繭実と希を同一無いし近しい存在とするような表現がなされていたように感じます。

では、希も実在した繭実が元ネタなのかというと疑問を生じます。記憶を自ら封じた主人公がわざわざ繭実の死を思い出すような情報を出さないはずだからです。つまり性格面などの小説という媒体にて情報の大部分を締める部分はオリジナルである可能性が高いです。
要するに現実にいて死んでしまった繭実の性格は、物語内の希とは真逆の可能性が高いと言えます。(明るい、儚げ、お淑やか等では無く イレギュラー扱いの繭実に似た活発 男勝り ヤンデレ気質?であった可能性が高い)


では、希の中にある繭実要素はなんなのか?
私は見た目であると考えました。希の見た目は、3つの話 全てで統一されたロングヘアとなっています。 逆に繭実はショート ロング ポニーテールとバラバラで安定しておらず、顔つきもそれぞれ大きく無表情 ホラー顔等 それぞれ異なっています。元ネタがいるのに、こうも不安定なのは不自然です。(現に元ネタのいる他のサブキャラも見た目は全て同じとなっています。)
即ち、こと見た目という一点に於いては希の元ネタが繭実(現実)であると推測できます。 見た目という同一要素があるため作中でも繭実と希を同一視する描写があるわけですね。過去回想のCGでは一見ショートカットのように見える繭実(現実)ですが、恐らく後ろで縛ったロングヘアでは無いかと私は考えました。













最終的な結論
今から書くのはこの記事を書いている途中で、蜜柑=未完という言葉遊びに気がついてたので急遽付け足した考察です。
(恥ずかしながら、プレイ中は全く気付かなかったですw 散々 虚ろなる器は完結していないと描写されてたんですけどね…)

まずタイトルが蜜柑(未完)の意味する事について考えてみましょう。
実は終わったと思われていた、「病床にて」「怨毒の塊」「いつわりのおとこ」の3作は完結していなかった…なんて事は無く ストーリー通り全てエンディングを迎えていると思われます。
では何が未完なのか?それは蜜柑という作品が未完 終わってないのです。
結末を迎えたのは、あくまで[虚ろなる器]であって[蜜柑]ではない、現実の素 繭実の死を乗り越え3つの物語の結末を描いた男の物語はまだ続くと言いたいのだと思いました。

要はめちゃくちゃ お洒落にした俺たちの冒険はまだ続いていくぜ!です。 最後の最後に伝えたかったのが人生に終わりは無いなわけです。良い終わり方ですね〜 個人的にすごく好みです。









総評
[総評]
凄い面白いわけでも、目立つシーンがあるわけでも、尖ったごく一部に刺さるシナリオでもありませんが 何処かじんわりと染み込むような作品です。
知名度的にも結構知る人ぞ知る的な感じで一定数の評価を得ているのも頷けます。 今回も考察を書いててとても楽しかったですし、こういったエロゲがこれからも発売してくれたらなと思わせてくれる一本でした。

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